管理人のイエイリです。
山岳トンネル工事で、掘削最前面となる「切羽」を発破した後、岩盤を破砕した「ずり」を運び出します。
ホイールローダーでずりをすくい取り、後方で待機するダンプトラックに積み込むのが一般的ですが、発破1回当たり切羽とダンプの間を40~60回も往復する必要があります。
発破直後の切羽は崩れやすく、トンネル現場の路面は凸凹なので振動が大きく、しかもバック運転のため、ホイールローダーのオペレーターにとって、ずり出し作業は心身ともに負担が大きいのが課題でした。
そこで鹿島は、ずり出しに使うホイールローダーを、
ナ、ナ、ナ、ナント、
自動運転で無人化
する実証工事に成功したのです。(鹿島のプレスリリースはこちら)
この実証工事は、鹿島が山岳トンネル工事の無人化を目指す「A4CSEL for Tunnel」の技術開発の一部として、岐阜県飛騨市内にある神岡試験坑道で行われたものです。
上の写真が無人化されたホイールローダーで、よく見ると運転席にはオペレーターがいないことが分かります。
自動化されたずり出し作業の手順は次の通りです。
- 発破によって切羽付近に飛散したずりを、自動ホイールローダーで切羽側に集積しながらすくい取る。
- 自動ホイールローダーは、切羽から40~60m後方に配置したホッパーフィーダーまで後進し、ずりを投入。ずりはホッパーフィーダーのベルトコンベヤーでダンプトラックに自動的に積み込まれる。
トンネル内では、衛星測位システム(GNSS)が使えません。
そこで、ホイールローダーに周囲の形状を計測する「LiDAR」センサーを搭載し、その計測データから坑内の地図を作成しつつ、機体位置をリアルタイムで推定する「SLAM」技術を活用しています。
これによって、発破のたびに内壁の形が変化するトンネル坑内でも、計画経路とのズレを30cm以内の精度で自動運転できる技術を確立しました。
ホイールローダーにはずりの重量を量るセンサーが付いており、ずりの残量を推定します。残量が一定量以下になった時は、
遠隔操作のバックホー
で散乱したずりをかき集め、ホイールローダーがすくい取りやすくします。
神岡試験坑道での実証の結果、ずり出し時の切羽付近を無人化することで、安全性が飛躍的に向上し、オペレーターも心身の大きな負担から解放できることを確認しました。
今後は、ずり出しのさらなる効率化や、より多くの工事・工種に展開できるよう技術開発を進めていくとのことです。山岳トンネル工事の無人化技術は、ほぼ完成に近づいていると言っても過言ではなさそうです。