大成建設、熊谷組がトンネル発破作業を続々リモート化! 爆薬の機械装填と無線電子雷管で実現
2025年9月4日

管理人のイエイリです。

山岳トンネル工事では、自動化や無人化が急ピッチで進んでいます。その動きは、ついに掘削を担う爆薬の装填作業まで及んできました。

大成建設は2025年8月4日に、国道13号新及位(しんのぞき)トンネル(発注者:国土交通省東北地方整備局)の現場で、日本で初めて爆薬の装填から発破までを、

ナ、ナ、ナ、ナント、

人力作業に頼らず

すべて機械で行うことに成功したのです。(大成建設のプレスリリースはこちら

日本で初めて人力作業によらず発破作業を行った国道13号新及位トンネルの現場(特記以外の写真、資料:大成建設)

日本で初めて人力作業によらず発破作業を行った国道13号新及位トンネルの現場(特記以外の写真、資料:大成建設)

発破完了後のトンネル下部断面

発破完了後のトンネル下部断面

これまでの発破に使われる電気雷管は有線式だったため、崩れやすい掘削最前面の「切羽(きりは)」に作業員が近づいて、爆薬の装填や結線作業を手作業で時間をかけて行う必要がありました。

その間に岩盤の崩落などのリスクもあるため、作業員の生産性のほか安全性にも課題がありました。

そこで同社は、結線作業が不要な日油(本社:東京都渋谷区)の無線電子雷管「ウィンデット II システム」と、切羽から1.5m離れた位置から爆薬を装填できる機械式爆薬装填装置「T-クイックショット」を組み合わせることにより、発破作業の遠隔化を実現しました。

無線電子雷管「ウィンデット II システム」

無線電子雷管「ウィンデット II システム」

無線による発破の仕組み。トンネル坑内ではUHF帯の電波で発破の信号を送り、切羽に設置した中継器で長波帯の250kHzに周波数を変換し、土中の電子雷管に信号を伝送する

無線による発破の仕組み。トンネル坑内ではUHF帯の電波で発破の信号を送り、切羽に設置した中継器で長波帯の250kHzに周波数を変換し、土中の電子雷管に信号を伝送する

無線雷管を取り付けた「親ダイ」と呼ばれる爆薬は、切羽に空けた穴の一番奥に押し込まれるので発破器からの電波が土中を伝って届くのかと、不思議に感じる方もおられるでしょう。

このシステムでは、切羽に周波数の変換器を設置しておき、発破器からの信号はトンネル坑内ではUHF帯の電波で送り、切羽に取り付けた中継器で長波帯の電波に周波数変換して親ダイまで信号を伝送する仕組みになっています。

また「T-クイックショット」は大成建設がアクティオ(本社:東京都中央区)と共同開発したもので、親ダイや誘爆用の「増しダイ」を空気圧送するもので、切羽から1.5m程度離れた場所からスピーディーに爆薬装填を行うことができます。

大成建設は2024年に他社に先駆けて、T-クイックショットを

無線電子雷管に対応

させました。(大成建設のプレスリリースはこちら

「T-クイックショット」による爆薬の装填作業

「T-クイックショット」による爆薬の装填作業

ドリルジャンボにT-クイックショットを搭載し、無線電子雷管を装填することで、発破関連の作業は切羽から離れた場所で行えるようになる

ドリルジャンボにT-クイックショットを搭載し、無線電子雷管を装填することで、発破関連の作業は切羽から離れた場所で行えるようになる

この無線電子雷管は、内閣府が進める「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期」のサブ課題である「革新的な建設生産プロセスの構築」で共同開発が進められています。

参加メンバーには大成建設のほか熊谷組や前田建設工業、フジタといったトンネル工事に強いゼネコンも含まれており、各社は自社の無人化、遠隔化システムの開発にしのぎを削っています。

例えば、熊谷組はニシオティーアンドエム(本社:大阪府高槻市)、キヨモトテックイチ(本社:宮崎県日向市)の協力を得て、「親ダイ装填の機械化技術」を開発しました。

この装置に、無線電子雷管や爆薬を模した「模擬親ダイ」を入れて人力作業を介さずに一連の爆薬装填が行えることを確認しました。(熊谷組のプレスリリースはこちら

模擬親ダイを使った爆薬装填の試験施工(写真:熊谷組)

模擬親ダイを使った爆薬装填の試験施工(写真:熊谷組)

爆薬装填作業の専用機を使った完全自動化のイメージ(資料:熊谷組)

爆薬装填作業の専用機を使った完全自動化のイメージ(資料:熊谷組)

爆薬の装填作業といえば、人間によるデリケートな扱いが求められる危険な作業と思われがちですが、機械による遠隔化や自動化も実現してきました。山岳トンネル工事の全自動化も、もはや時間の問題のようです。

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