管理人のイエイリです。
「重い物を持ち上げるときは、立ったまま持ち上げてはダメ。まず腰を下ろし、持ってから立ち上がる方がいいよ」など、作業フォームについて指導された経験は皆さんがお持ちでしょう。
工事現場や工場などでは、さらに複雑なフォームが要求される作業があり、それぞれ上手な作業フォームというものがあります。これまではベテラン作業員と一緒に仕事をしていく中で、一つ一つの動作を学んでいましたが、現場からはさらにスピーディーな人材育成が求められています。
こうした背景のもと、日立製作所とドイツ人工知能研究センター(Deutsches Forschungszentrum für Künstliche
Intelligenz)は、AI(人工知能)で作業フォームの改造点を指導してくれるシステムを開発しました。
作業員にスーツ型センサーを着用してもらい、
ナ、ナ、ナ、ナント、
30カ所以上の関節
の動きを計測し、そのデータから身体の各部分にかかる負荷を定量評価するものなのです。(日立製作所のプレスリリースはこちら)
まずはベテランの作業員にこのスーツを着てもらい、模範的な作業動作のデータを取ってAIに学習させておきます。
次に新人の作業員にこのスーツを着用させ、いろいろな作業をしてもらいながらデータを計測します。
両者のデータをAIが比較し、模範的な作業との違いを身体の部位ごとに明らかにし、それを新人の作業員にフィードバックすることで作業フォームの改造点を指導してくれるというわけです。

模範作業者との動作の違いをリアルタイムに計測し比較・評価するための実験用画面
(左上)身体負荷の評価の時間推移 (右上)課題の見つかった動作の動画
(左下)各身体部位の状態推移 (右下)各身体部位の動作に対する評価
このシステムを使って、重量物の持ち上げ動作について実験したところ、作業による身体負荷をリアルタイムに定量評価することができました。
そして作業に慣れない人の動作に対しては、
腰やひざの動き
が模範的な作業に比べて大きく異なるという情報を提示できることが確認できました。
日立製作所とドイツ人工知能研究センターは2017年にも、ウェアラブルデバイスとアームハンド型デバイスを使って、作業員の視線や筋肉の動きを計測し、作業員の行動をリアルタイムに認識するシステムを開発しており、今回はそれに続く開発です。(日立製作所のプレスリリースはこちら)
これらのシステムは、作業員の動きをデジタルデータで収集し、解析し、フィードバックするという点で、“作業員のIoT(モノのインターネット)化”を実現するものと言えそうです。
これまでは現場で失敗したり、怒られたりしながら、少しずつ作業に習熟していきましたが、このシステムがあると短期間で上手な作業フォームが身に付きそうですね。