管理人のイエイリです。
海上工事の現場周辺を行き交う船の位置を検知するために、よく使われるのがレーダーです。
しかし、レーダーにも思わぬ弱点があります。それは500m以内の近い位置にいる船は、レーダーの送信波と反射波の干渉などによって、位置が検出しにくかったり、1つの船が何隻もの“偽像”を伴って見えたりするからです。
東亜建設工業は、船舶レーダーが近距離に弱いという“レーダー下暗し”問題を解決するため、船舶航行監視システム「COS-NAVI」を開発しました。
500m以内にいる船は、現場周辺を高精度カメラによって撮影した映像から、
ナ、ナ、ナ、ナント、
AI画像認識技術
によって、検知するのです。
海上を行き交う船舶の位置を把握する方法として、大型船にはAIS(Automatic Identification System)という船舶自動識別装置の搭載が義務付けられており、GNSS(全地球測位システム)で計測した自分の位置を発信しているので、距離にかかわらず、AIS対応のレーダーなどで検知できます。
一方、小型の漁船やプレジャーボート、工事用船舶などには、AISの搭載が義務付けられていないため、レーダーとともに目視による監視が欠かせませんでした。
今回、開発した船舶航行監視システム「COS-NAVI」は、AISと船舶レーダー、GNSSに加えて、カメラ映像のAI検知機能により、近距離にいる小型船舶の位置を把握し、航行状況を自動追尾できるようになったのです。
AI画像認識の教師データには、実際の港湾工事で撮影した映像を用いているため、一般の船舶のほか、グラブ浚渫船や地盤改良船、起重機船、潜水士船といった工事用船舶も検知できます。
実際の港湾工事で、システムを検証したところ、船舶検知率は、
90%を超える
ことが確認されました。
COS-NAVはこのほど、国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)にも登録されました(登録番号:KTK-240003-A)。
海洋工事の安全を確保するため、これまではレーダーと人間の目視によって常時、周囲を警戒する必要がありました。COS-NAVIによって人間の労力はもちろん、見落としなどのリスクも大幅に削減されそうですね。