管理人のイエイリです。
BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)で建物を設計するとき、設計の初期段階で様々な検討を行う「フロントローディング」(業務の前倒し)という言葉がよく使われます。
例えば、斜線制限や日影規制を満たす範囲で、建物の面積や、建物に当たる日射量や適切な窓配置を行うといった空調性能などを、BIMモデルを使ってシミュレーションし、最適なものを選ぶ、といった業務を意味します。
清水建設は、設計の初期段階に行うこれらの検討に、高度なコンピュテーショナルデザイン手法を採り入れたプラットフォーム「Shimz DDE(Digital Design Enhancement platform)」を構築し、全社の設計部門で本格的な運用を開始しました。
検討に使うツールは、3Dモデリングソフト「Rhinoceros」と、そのアドインソフト「Grasshopper」を核にして、意匠、構造、設備の分野を横断する、
ナ、ナ、ナ、ナント、
数十種類に及ぶソフト
の機能を統合しているのです。(清水建設のプレスリリースはこちら)
この「Shimz DDE」を使って建設された建物の例として、「東急コミュニティー技術研修センター NOTIA」があります。東京都内に建設された延べ床面積2446.73m2、地下1階 地上5階建てのRC+S併用構造です。
東京都の事務所用途ビルとしては初めて、1次エネルギー75%削減を達成した「Nearly ZEB」の建物となりました。
で、いったい、どんなところに「Shimz DDE」が使われたのかというと、斜線制限や日影規制、天空率といった法規制の検討や、温熱快適性や屋外気流などの環境性、そして周囲の建物とのプライバシーを保ちつつ昼光を利用するといった検討、構造部材の最適化などです。
例えば、この建物の窓には様々な方向を向いたフィンが付いています。「室内を明るく保ちながら日射を遮り、近隣の建物との見合いを軽減する」といった課題を、Shimz DDEによってフィンの角度をいろいろ変えてシミュレーションすることで最適なパターンを見つけ出しました。
また、建物の天井には、梁が格子状に組み合わされた「ワッフルスラブ」があります。軽快な構造にするため、スラブ厚を薄くしながらも、梁の強度を確保するという検討を行う際に、構造要素の各諸元をパラメーター化してシミュレーションを繰り返し、最適化しました。
これだけ高度なシステムなので、使いこなせる人は限られているのかと思いきや、アルゴリズムデザインラボ(本社:東京都渋谷区)などの協力で、社内研修システムを整備、展開した結果、
既に200人近くの設計者
が高度なスキルを身につけたそうです。
清水建設は、中期経営計画(2019~2023)に基づき、「設計施工一貫BIM」の構築を進めています。Shimz DDEで作成された3Dモデルは、設計・施工BIMにデータ連携されます。
さらに今後はShimz DDEにAI(人工知能)などの最新技術も取り込んでいくとのことです。BIMやシミュレーションの生産性がさらに進化しそうですね。