管理人のイエイリです。
施工管理の業務では、ベテラン技術者の「目視」に頼った検査が非常に多くあります。鉄筋の圧接継ぎ手の品質管理もその一つです。
圧接継ぎ手とは、鉄筋の端面を突き合わせて、押し付けながら加熱し、赤熱状態でダンゴのようなふくらみを持った継ぎ手を作る方法です。このとき、端面が溶けるまで加熱してはいけません。
継ぎ手の検査は技術者が、圧接部のふくらみや直径、圧接面のずれ、鉄筋中心軸の偏心量や折れ曲がりなどを専用のノギスで測ったり、目視で確認したりして、合格かどうかを判断します。
しかし、人手不足の昨今、膨大な数の鉄筋継ぎ手を検査するベテラン技術者の確保や若手の育成は、難しくなりつつあります。
この問題を解決するため、清水建設とNTTコムウェアは、
ナ、ナ、ナ、ナント、
圧接継ぎ手の検査をAI化
することに取り組んでいるのです。(NTTコムウェアのプレスリリースはこちら)
この「鉄筋継ぎ手AI検査」は、ガス圧接継ぎ手の検査項目をロジックとして組み込み、合格/不合格の判定を行うものです。
ペースとなるのは、NTTコムウェアの「Deeptector」という画像認識AI(人工知能)です。
工事現場では場所によって背景や照明が異なるため、撮影された画像のAI判定は精度を上げるのが難しいという課題がありました。
そこでDeeptectorに圧接継ぎ手の輪郭画像を学習させて、接ぎ手各部分の検出率を高める「セグメンテーション」という技術を活用することで、高精度の認識率を実現することができました。
両社は2020年1月から3月にかけて、この「鉄筋継ぎ手AI検査」を使った実証実験を清水建設が施工中のビル現場で行います。
鉄筋継ぎ手の写真をスマートフォンで撮影し、AIの判定精度や作業時間、画面操作性などを目視検査と比較して検証します。
両社は、「鉄筋継ぎ手AI検査」を工事監理者の育成支援ツールとして、来年度早期に実運用することを目指しています。
清水建設では、今回のガス圧接継ぎ手のAI検査を皮切りに、
その他の工事検査項目
にも、AIの適用を拡大することで、工事検査の効率化や品質向上に向けた取り組みを進めていくとのことです。
上の図は、「Deeptector」が様々な画像を判定するパターンです。今回のガス圧接継ぎ手は右端の「正例判定型」に近いものでしょう。
このほか、「検出型」「分類型」「レベル判定型」などのパターンが準備されているので、あとは検査の目的に合わせて様々な”教師データ”を作って学習させればいいわけですね。
AIシステムをゼロから開発するとなると、頭が真っ白になってしまいそうですが、こうしたメニュー的なものがあると、開発のイメージがいろいろとわいてきます。
そのうち、工事現場で行われる目視検査の大部分は、AIに移行していくのかもしれませんね。