管理人のイエイリです。
工事現場の一日は朝礼から始まります。朝礼台の前に整列し、ラジオ体操を行った後、当日の作業内容や安全上の注意、KY(危険予知)活動、そして「今日も一日無災害でいくぞ、よし!」という安全コールは、どこの現場でも見られる風景です。
しかし、昨今のコロナ禍で「三密」になりやすい朝礼は、どう実施していいのか頭を悩ませている現場も多いでしょう。
下の写真は、大林道路のある現場の朝礼風景です。職員がいろいろと説明や注意を行っているのに、職人さんたちはみんなスマホをいじっています。
彼らが見ているのは、
ナ、ナ、ナ、ナント、
朝礼アプリ
なのです。(大林道路のプレスリリースはこちら)
このアプリは、朝礼を三密にならないように実施するため、大林道路、Intelligent ACORN(本社:千葉県松戸市)、システム・クリニック(本社:神戸市東灘区)が2020年6月から8月の間に共同開発したものです。
三密にならないように朝礼参加者が間隔を空けて並ぶと、後ろの方の人は声が聞こえにくくなります。そこで、このアプリは画面上に朝礼で職員が話している声がスマホのスピーカーから流れるようにしています。
画面にもテキストなどが表示され、職員が画面操作を行うと、全員のスマホが同期するので、「今、どこを見ているの?」といった問題が起こりません。全員が同じ音声を聞き、同じ画面を見ながら朝礼が進行するので、理解もスムーズです。そして朝礼後も、注意事項などを見直すことができます。
従来の朝礼では、みんなが理解できたかどうかを調べる術はありませんでしたが、このアプリでは注意事項がわかったら参加者はそれぞれ「了解」ボタンを押したり、グループごとに行うKY活動の実施状況を写真で報告したりと、参加者からのフィードバック機能も付いています。
ラジオ体操の動画は毎回、ダウンロードしなくてもいいように、YouTube上に公開されている動画を全国ラジオ体操連盟に許可を取って、あらかじめアプリに内蔵されています。
日々の朝礼コンテンツは、WEBブラウザーで朝礼アプリの専用クラウドにアクセスし、作成します。
●朝礼アプリに収録されているコンテンツ
1.ラジオ体操(NPO法人全国ラジオ体操連盟へYouTube動画使用許諾申請) 2.当日の作業箇所を写真で確認(朝礼場所でも現場状況を確認) 3.当日の作業内容と安全注意事項(協力業者発表内容) 4.職員より当日の注意事項連絡 6.グループ毎のKY活動記録(職長が写真撮影) 7.作業箇所においてグループごとに当日の作業方法、注意事項を確認 8.作業開始 |
この朝礼アプリが開発されたことにより、思わぬ働き方改革も実現できそうです。それは
ダンプの運転手
などが、どこからでも朝礼に参加できるようなり、朝の時間に余裕が生まれることです。
これまで、子育て中の女性ドライバーは朝、保育所に子供を預けてからダンプの駐車場に行き、それから現場に駆け付けて朝礼に参加するのは時間的に無理でした。
それがこのアプリでどこでも朝礼に参加できるようになると、現場で働くことが可能になるというわけです。
大林道路 代表取締役社長の福本勝司氏は「このアプリは当社だけでなく、広く使ってほしいので近く公開することを考えている。安全衛生協議会のリモート開催などにも使えそうだ」と語っています。
今後はBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の表示やスマホの位置情報を生かした立ち入り禁止エリア進入時の注意喚起、360度カメラなどを接続してのリモート安全パトロールなど、機能を拡充することも検討しています。
建設業で広く行われている朝礼ですが、参加者にどんな情報をどう伝えるかについてのワークフローについては、あまり検討されてこなかったのではないでしょうか。このアプリの登場で、朝礼にイノベーションが起ころうとしています。

朝礼アプリの開発に携わった関係者たち。左からIntelligent Acorn代表の一岡義宏氏、システム・クリニック代表取締役社長の菅沼直昭氏、大林道路代表取締役社長の福本勝司氏、同技術部担当部長の佐藤正憲氏(写真:家入龍太)