管理人のイエイリです。
ひと昔前まで、伝統的な経験・勘・度胸による“KKD”が幅を利かしていた土木工事の現場は今、大きく変わってきました。
スーパーゼネコンの一角を占める清水建設が本気出すと、土木工事はこう変わるというのを実証しているのが、同社が神奈川県山北町から秦野市にまたがる区間で施工中の新東名高速道路の現場です。
特にこの区間の最西端にある川西工事は、
ナ、ナ、ナ、ナント、
ICT-Full活用工事
と銘打っているほど、最先端のICT(情報通信技術)がフルに導入されているのです。
この工区の西端にある塩沢地区では、スマートインターチェンジを施工しています。他社が施工する近隣現場からの残土処理を行うため、約320万m3という壮大な盛り土工事を行っています。
現場は谷なので、本来は橋を架けて通すところですが、他工区からの残土を受け入れる使命を持ったこの現場では、あえて盛り土を構築して道路を通します。
ドローンによる測量や点群データ、3DのCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)による施工計画、ICT建機による施工はもはや当たり前です。
盛り土の施工管理も、50cm立方の「ボクセル」という単位ごとに、転圧回数や含水比、施工時の天候、残土の発生現場などを記録しており、その精密さにも驚かされます。
また、テレワーク的な取り組みも推進しており、発注者による立会検査の遠隔化や、内定者による現場見学のVR(バーチャルリアリティー)化、社内会議のVR化も行っています。
これだけの盛り土があるということは、それに対する切り土もあるということです。
川西工事の東端にある向原地区では、約80万m3もの切り土を行っており、その土砂は約700mの
ベルトコンベヤー
で高速道路脇に造られたホッパーまで運び、そこでダンプに積み込んで高速道路経由で運んでいるのです。
このベルトコンベヤーは、東名高速道路の上り線と下り線の間など、狭いところを通っています。そのため、現場を点群データで計測し、CIMモデルによる精密な施工シミュレーションを行って、無事に完成させました。
この現場でICTによる生産性向上がうまく機能しているのは、なんと言っても発注者のNEXCO中日本と施工者の清水建設の双方に、「ICTで現場を変えて行こう」という熱意を持った担当者がいたおかげでしょう。
その結果、受発注者の双方から生産性向上などのアイデアが次々と生まれ、実現に結びついたのです。まずは発注者が熱意を持ち、行動することがi-Constructionを成功に導く鍵と思った次第です。