管理人のイエイリです。
施工段階でのBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)活用に取り組む建設会社が増えてきました。
BIM活用を先行する各社では、施工段階でどのようにBIMを活用し、どのようなメリットを得るかということを試行錯誤してきました。
こうした背景を受けて、日本建設業連合会(以下、日建連)は、施工段階で効果的にBIMを活用するための具体的方法をまとめた「施工BIMのスタイル~施工段階における元請と専門工事会社の連携手引き2014」を昨年末に発刊しました。
日建連のIT推進部会 BIM専門部会 専門工事会社BIM連携ワーキンググループが2013年4月から研究してきた成果をまとめたものです。
私も早速、1冊入手して読んでみました。イラストが全面的に採用されたレイアウトは、現場の技術者もBIMに対して親近感を抱かせる構成です。
しかし読み進めていくうちに、この本のすごさが少しずつわかってきました。
ナ、ナ、ナ、ナント、
各社のBIM活用ノウハウ
が惜しみなく公開されているのです。
いったい、どんなBIM活用ノウハウが掲載されているのかをご紹介しましょう。
例えば、エレベーター用の取り付け部材と、鉄骨本体の干渉チェックを行っていても安心はできません。鉄骨の継ぎ手が先に決まっていると、継ぎ手とエレベーターの取り付け部材が新たな干渉を起こし、現場で設計変更が必要になります。
そこで、「鉄骨の継ぎ手の位置を決める前にエレベーター取り付け部材の固定方法を調整しておく」ことをBIMで行う手順が紹介されています。
3章では準備工事から架設、解体、鉄骨、そして防水や外構に至るまで、14種類の工事について、こうしたノウハウの数々が一覧表にまとめられています。
ここで注目したいのは、BIMの活用効果を、工事現場でおなじみの施工管理要素であるQ(品質)、C(コスト)、D(工期)、S(安全)、E(環境)と絡めて整理していることです。
例えば、基準階の施工手順を工事関係者間で合意形成して、サイクル工程を短縮することは、Q、C、D、Sに大きな効果がある、といった具合に、施工管理の実務者がどのようにBIMを使えば良いかを考えるヒントを与えてくれています。
巻末の参考資料には、3章に掲載されているBIM活用ノウハウをQCDSEで逆引きできる星取表でも整理されています。
そして、より実務的なことは、工事現場で元請と専門工事会社が連携してBIMを活用するための
BIM連携計画書
や、BIM実施報告書のひな形が付いていることです。
このひな形をそのままExcelなどで作れば、現場でその日から使えそうですね。
BIM活用を成功させるための基本的な考え方は、「元請側の作業所長の下で、BIM担当者と係員が一体となって専門工事会社と連携すること」です。つまり、所長以下の組織として、BIM活用の目的を共有しながら進めていくのが“勝利の方程式”のようですね。
ちなみに、本書の価格は3000円(税込み、送料別)と、充実した内容の割に超リーズナブルです。施工段階でBIMを活用しようとする技術者は、必携ですよ。
執筆・編集を担当したのは、リーダーの曽根巨充さん(前田建設工業)、サブリーダーの香月泰樹さん(戸田建設)と小田博志さん(フジタ)、そして金子智弥さん(大林組)、伊藤一宏さん(鹿島建設)、室井一夫さん(清水建設)、友景寿志さん(大成建設)、染谷俊介さん(竹中工務店)と、スーパーゼネコン5社を含むそうそうたるメンバーです。このほか、平手和夫さん(東芝エレベータ)が編集協力を行いました。