オリンパスの工事現場用デジタルカメラ「TG-3 工一郎」をドローンに載せて、現場を空から撮影する―――こんな思い切った実験が、砂子組(本社:北海道奈井江町)が北海道・南幌町で施工中の道央圏連絡道路の工事現場で行われた。小型・軽量で防水・防塵・耐衝撃性を持つ工一郎は、陸上や水中だけでなく、ついに空中まで制覇したのだ。
「TG-3 工一郎」(以下、工一郎)を搭載したドローンが道路工事現場を一往復して戻ってきた。パイロットを務める岩崎 企画調査部精密農業チームの河手健一さんが「自動モードから手動モードに切り替えます」と言い、ドローンをゆっくり着陸させると砂ぼこりが舞った。
うっすらと砂をかぶった工一郎の黒いボディーからSDカードを取り出し、パソコンで確認すると、見事な空撮動画が撮れていた。この日、工一郎は砂子組が施工する道央圏連絡道路 南幌町晩翠南改良工事の現場をついに上空から撮影することに成功したのだ。
現場を撮影して戻ってきたドローン(左)とドローンに搭載された工一郎 |
ドローンによる空撮は安全第一
この映像を撮影するためにドローンが離陸、飛行し、着陸するまでの時間はわずか2分ほどだったが、事前の準備はその数十倍の時間をかけて入念に行われた。まずはドローンの機種選定だ。
防水・防塵・耐衝撃性を持つ工一郎は、地上での工事写真では小型・軽量だが、重さは247gある。工一郎を搭載して離陸するのはもちろん、空中で安定した姿勢を保ちながら空撮するためには、積載重量を表す「ペイロード」にも余裕が必要だ。
一般によく使われている小型のドローンに載せても空撮は可能と思われたが、安定性などを考慮してこの日、空撮に使ったドローンは自重約3kg、バッテリーを含む積載重量は2.5kgというやや大型のものを選んだ。
ドローンの飛行を担当する岩崎のパイロットは、このドローンや飛行させるためのバッテリー、制御用システムなど一式を、ワゴン車に積んで現場に搬入した。
工事現場の空撮で気を付けなければならないのは、人が作業しているエリアを飛行しないこと、工事現場の上空をはみ出さないこと、そして絶対に墜落させてはならないことだ。つまり、ドローンによる空撮は、安全第一なのだ。
パイロットは工一郎の重心を測りながらドローンのジンバルに取り付けると、チェックリストに従って機体やプロペラ、バッテリーの充電量などを一つ一つ、入念に点検していった。
続いて、飛行ルートの確認だ。飛行計画では、道路工事の現場上空に沿って飛行し、現場の奥で作業している杭打ち機の手前で引き返し、往復ルート上を撮影することにした。
趣味の模型飛行機なら、目分量で引き返してくるところだが、プロは飛行ルートの精度にもこだわる。人が作業している場所の上空や、現場の敷地から外れた空域には絶対にはみ出さないようにしつつ、現場内は最大限に撮影するのがプロのパイロットに課せられた任務だからだ。
そこで次にパイロットは、ワゴン車に搭載したノートパソコンで、GPS(全地球測位システム)対応のナビゲーションシステムを開き、飛行ルートを入力した。飛行中、パイロットはドローンから送られてくる位置と飛行ルートを常にチェックしながら、正確にドローンを誘導するのだ。
このシステムは、空中カメラからどのような映像が撮れるのかを事前にシミュレーションすることができる。パイロットの河手さんは、工一郎のレンズ仕様をパソコンに入力し、映像に映る範囲などを確認した。
GPS対応のナビゲーションシステムに工一郎のレンズ仕様や飛行ルートを入力するパイロット(左)。1回の飛行には99WHのバッテリー2個を使用し、毎回、フル充電のものと交換する(右) |
その後、パイロットはフル充電済みのバッテリー2個をドローンに取り付け、プロペラを1枚ずつ、手回しした。ベアリングに砂などが入っていないかどうかを確認するための作業だ。特に砂鉄が入っていた場合は、モーターを即、交換するという。
工一郎を積んでついに離陸したドローン
離陸前のチェックをすべて完了したパイロットは、ついに操縦に使うプロポを手にした。モーターの出力を制御するスロットルレバーを押すと、ドローンの4つのローターが回転し始めた。
徐々に出力を上げながら問題がないことを確認すると、スロットルをさらに倒した。すると工一郎を載せたドローンは、軽々と宙に舞った。一連の作業を見守っていた砂子組の土木技術者からは思わず歓声が上がった。
そして、ドローンは道央圏連絡道路の現場上空を動画撮影しながらゆっくりと一往復し、冒頭のシーンのように着陸し、ミッションは無事成功した。
工一郎にはGPS機能が搭載されており、撮影した写真ファイルに撮影時の位置情報を記録することができる。
撮影された写真に埋め込まれた位置情報を地図上に表示してみると、撮影時にドローンが道路工事現場の上空で描いた航跡がまるで定規で線を引いたかのように一列に並んでいた。
情報化施工、CIMに力を入れる砂子組
今回の現場では、砂子組が土木構造物の3次元データによって施工管理を行うCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)や、自動制御機能付きのICTブルドーザーやICTバックホーによって切り土や盛り土、掘削を行う情報化施工が行われている。
現場の杭打ち機は、脱水圧密による地盤改良を行うもので、地中に「ペーパードレーン」という水抜き用の排水材を打ち込む作業をしていた。排水材の打ち込み位置もGPSによって管理している。
これまで様々な現場で陸上、水中での写真撮影に使われてきた工一郎が、ついに上空からの現場撮影についに成功した現場は、砂子組が持つ技術をフルに発揮している建設ICTのメッカでもあったのだ。
●動画も絶賛公開中!工一郎がドローンで空を舞う様子を動画で記録しました。こちらもぜひ、ご覧ください。1.工一郎、ただいまドローンで旅立つ準備中 2.工一郎、ドローンで旅立つ 3.工一郎、ドローンで無事着陸か!? 4.工一郎がドローンから見た地上風景(工事現場) |
【問い合わせ】 防水、防塵、耐衝撃の工事現場用カメラ オリンパス「TG-3工一郎」特設サイト http://olympus-imaging.jp/product/construction/ 【最新情報】 Facebookページ オリンパス「工一郎」 |