佐藤総合計画がBIMで最適なルーバー角度、ピッチを解析
RevitとDynamo、Refineryによるジェネレーティブデザイン(オートデスク)
2020年1月16日

外壁にルーバーが付いた建物内への日射量は、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の日影解析機能を使うと求められるが、「冬暖かく、夏涼しく」といった相反する条件に帯する最適なルーバー角度を求めるのは難しい。そこで佐藤総合計画は、BIMソフト「Revit」をジェネレーティブデザインツールと連携させることにより、ルーバーの最適解を求めることに成功した。新しいBIMによる設計法を追究する同社を直撃した。

RevitのBIMモデルを元に、ジェネレーティブデザインでルーバー角やピッチの最適解を求める解析作業

RevitのBIMモデルを元に、ジェネレーティブデザインでルーバー角やピッチの最適解を求める解析作業

   ジェネレーティブデザインで最適解を追究

「冬場に室内に差し込む日射量を最優先し、夏場の日射をある程度制限するのに最適なルーバーのピッチや角度を、定量化された日射データに基づいて決められるようになりました」―――こう語るのは、佐藤総合計画 情報開発センターセンター長の網元順也氏だ。

建築設計者にとって悩みのタネは、限られた予算の中で、建物の環境性能をいかに最大化するかだ。クライアントからは、「冬はできるだけ暖かく、夏はできるだけ涼しく、そして室内からの視界はできるだけ広く、コストは一番安くしてほしい」というように、相反する条件を突きつけられることがしばしばある。

「これまでは、2~3案作った設計案の中から一つを選ぶといった決め方がほとんどでした。しかし、これでは本当に最適な設計案になっているのか、クライアントが納得するように説明できませんでした」(網元氏)。

Revitとジェネレーティブデザインを連携させ、最適な設計案を求める作業

Revitとジェネレーティブデザインを連携させ、最適な設計案を求める作業

そこで同社は、オートデスクのBIMソフト「Revit」から光環境に関するパラメーターを取り出し、「ジェネレーティブデザイン」という数値設計手法と連携させることにより、最適な設計値を求める新しい設計手法の開発に取り組んでいる。

例えば、建物の外壁設置するルーバーの角度やピッチを決める場合、(1)Revitで作成したBIMモデルから建物やルーバーなどの形状情報を読み取る→(2)ジェネレーティブデザイン用のツールで最適な配置を求める→(3)専門のソフトで検証する、という流れになる。

Revitで設計したルーバーの角度やピッチを最適化する作業の流れ

Revitで設計したルーバーの角度やピッチを最適化する作業の流れ

   「Dynamo」と「Refinery (*)」が最適化を担う

最適な設計案を求めるジェネレーティブデザインを担うのは、オートデスクのビジュアルプログラミングツール「Dynamo」と、最適化ソルバー「Refinery」だ。

(*)Project Refinery Beta
https://www.autodesk.com/campaigns/refinery-beta

Revitから形状情報を受け取り、DynamoとRefineryがジェネレーティブデザイン手法によって最適解を求めていく

Revitから形状情報を受け取り、DynamoとRefineryがジェネレーティブデザイン手法によって最適解を求めていく

「Dynamo」とは、RevitのBIMモデルの形や大きさなどを数式によってデザインするためのツールだ。複雑な曲面の作成や部材の配置を作ったり、いくつかのパラメーターを変えながらデザインを連続的に変化させたりするなど、人間の手作業では難しいデザイン操作が行える。

一方、「Refinery」はDynamoとデータをやり取りしながら、少しずつパラメーターを変化させて最適解を求めていくツールだ。「遺伝的アルゴリズム」という合理的な手法により、トライアンドエラーの計算を繰り返しながら、最適な解に向けて収束計算を行う。

1000ルクスの部屋がほしいという目的で照明設計を収束させるイメージ

1000ルクスの部屋がほしいという目的で照明設計を収束させるイメージ

ただ、DynamoとRefineryによる最適解の追求段階では、照度や輝度などは概略値で行っているため、最終案に対しては光解析ソフト「Radiance」によって性格や解析を行い、性能の検証を行うという流れだ。

   夏の日射を最適化するルーバー

例えば、5階建てのオフィスビルの5階フロア(面積約1200m2)で、(1)夏に日射を最小化する、(2)冬に日射を多く入れる、(3)冬に日射を深く入れる、(4)ルーバーコストを最小化する、という課題を解く場合を考えてみよう。

課題としたオフィスの5階フロアのBIMモデル

課題としたオフィスの5階フロアのBIMモデル

長辺と短辺の外壁に付くルーバーのピッチと角度をパラメーターとして設定する

長辺と短辺の外壁に付くルーバーのピッチと角度をパラメーターとして設定する

課題条件のイメージ

課題条件のイメージ

長辺と短辺の外壁に付くルーバーのピッチと角度をパラメーターとして設定する

長辺と短辺の外壁に付くルーバーのピッチと角度をパラメーターとして設定する

長辺と短辺の外壁にそれぞれ「ルーバー1」と「ルーバー2」を設置する。それぞれの角度とピッチをパラメーターとして設定し、最適値を求めるのがこの解析のゴールだ。

太陽光が直接、室内に差し込む「直達日射」の量を表すために、「ソーラーアクセス」という考え方を使っている。

CG(コンピューターグラフィックス)のレンダリングを行う「レイトレーシング」と同様に、太陽光線の量を「本数」で数値化したものだ。

太陽光の量を本数で定量化する「ソーラーアクセス」の概念図

太陽光の量を本数で定量化する「ソーラーアクセス」の概念図

2面のルーバーの角度やピッチを変えながら、冬至と夏至のソーラーアクセスを組み合わせて、室内に差し込む日射の強さ(本数)や深さ、ルーバーのコストを何通りも計算していく。

その結果、冬の日射量を最大化した場合、夏の日射量を最小化した場合、ルーバーのコストを最小化した場合など、最適なルーバーの角度やピッチがはじき出させる。

冬の日射量を最大にした場合のルーバー

冬の日射量を最大にした場合のルーバー

夏の日射量を最小にした場合のルーバー

夏の日射量を最小にした場合のルーバー

コスト(ルーバー本数)を最小化した場合のルーバー

コスト(ルーバー本数)を最小化した場合のルーバー

   相反する条件の折り合いをつける

当然、どの条件を最優先にするかによって、最適なルーバーの角度やピッチは変わってくる。建築設計者としては、すべてを最適化することはできないまでも、優先すべき条件と他の条件とのバランスを考えながら、総合的にみて最良の選択を行う必要がある。

従来は、これらの条件の満足度を定量的に判断することが難しかったため、設計者もクライアントも「果たして、これが最良の選択なのか」という疑念を拭い去ることはできなかった。

しかし、ジェネレーティブデザインでは、数多くのトライアンドエラー計算を行い、それぞれの条件による多数の計算結果を比較することで、最適値を探ることができるのがメリットだ。

例えば、上記の例の場合、(1)最優先すべきは冬の日射量確保で、ソーラーアクセスが45本以上、(2)続いて、夏の日射本数が最少になる、(3)ルーバーコストも低い数値である、といった優先順位を満たすように、計算結果一覧のなかからルーバーの角度やピッチを選んでいくと、それが限界の結果であることが納得できるのだ。

冬の日射量確保→夏の日射量最少化→コストの順で計算結果を選ぶイメージ

冬の日射量確保→夏の日射量最少化→コストの順で計算結果を選ぶイメージ

一方、室内にいる人からは、ルーバーがあると外を見るときの視界の妨げになる面もある。そこで、外から差し込む太陽光を評価するソーラーアクセスと同様に、室内から屋外に向けての視界の開き具合を、視線の本数で表してRefineryで解析することも可能だ。

下記は外に抜ける視線を最大化した場合と、夏の日射量を最小化した場合の結果の違いを表す。視界の開き具合を最優先にして、夏の日射を次の優先順位とする、といった条件にした場合も、多数の計算結果から納得いく意思決定を行うことができる。

視線を最大化した場合と、夏の日射量を最小化した場合の結果の違い

視線を最大化した場合と、夏の日射量を最小化した場合の結果の違い

   Radianceによる照度解析で検証

DynamoとRefineryによるトライアンドエラー計算では、日射の量を太陽光の本数で表して簡易的な分析を行った。そのため、太陽光が室内にたどり着くかどうかしか考慮していない。

しかし、実際の室内の光環境は、窓ガラスによる減衰や床や壁による反射・拡散などが複雑に絡み合った結果だ。

そこで、佐藤総合計画では、最適解として得られたルーバーの角度やピッチをもとに、照度解析ソフト「Radiance」により高精度の解析を行って結果を検証している。その目的は、ルーバーのデザインが求められる照度を確保しているかどうかを確かめることだ。

Radianceで冬の室内照度を解析した例

Radianceで冬の室内照度を解析した例

冬の日射量について、ルーバー角度の最適化前(90度、左)と最適化後(38度東へ、右)を比較したもの。最適化後の方が日射量が増えていることがわかる

冬の日射量について、ルーバー角度の最適化前(90度、左)と最適化後(38度東へ、右)を比較したもの。最適化後の方が日射量が増えていることがわかる

   最適解をBIMモデルにフィードバック

最後の手順として、Radianceによる高精度の照度解析で、性能が確認されたルーバーの角度やピッチを、RevitのBIMモデルにフィードバックする。

このときも、BIMモデル上にルーバーを1つ1つ、手作業で配置していくのではなく、ルーバーのファミリータイプのパラメーターをDynamoで編集し、角度と幅を変更する。そして、一定のピッチでBIMモデル上に複写していくのだ。

Dynamoにより、ルーバーのファミリータイプのパラメーターを変更する

Dynamoにより、ルーバーのファミリータイプのパラメーターを変更する

ルーバーのファミリーを一定間隔でBIMモデル上に複写する

ルーバーのファミリーを一定間隔でBIMモデル上に複写する

佐藤総合計画の光環境最適化の取り組みは、さらに続いている。それはRadianceによる照度解析で得られた輝度画像をもとに、VTL・ビジュアル・テクノロジー研究所(本社:東京都品川区)が開発したアピアランス(見え方)設計支援ツール「REALAPS」によって、VRによる明るさ画像やグレア画像を作成。設計プロセス全体を通して見え方を定量的に検討する技術を確立することだ。

「見え方」という視点に立つと、朝や夕方は自然光だけでは部屋が暗く見えてしまうので、人工照明による補助が必要であることがわかることもある。

冬至の朝、9時の輝度や明るさの画像。明るさ感推定値によると、自然光だけでは部屋が暗く見えてしまい、人工照明による補助が必要なことがわかる

冬至の朝、9時の輝度や明るさの画像。明るさ感推定値によると、自然光だけでは部屋が暗く見えてしまい、人工照明による補助が必要なことがわかる

RevitのBIMモデルをもとに、DynamoとRefineryを組み合わせて最適解を求めたり、RadianceやREALAPSで解析したりする設計法は、極めて珍しく、前例もほとんどない。

そこで、佐藤総合計画は、こうした解析について日本や海外の大学で経験を積んできたメンバーからなる合同会社「ぽ」とサポート契約を結び、解析時にトラブルがあった場合などの解決を行っている。

先駆者としてBIMによる設計の新境地を開きながら、今年創立75周年を迎える佐藤総合計画の挑戦はこれからも続いていく。

Revitとジェネレーティブデザインによる光環境の最適化に挑むメンバー。左から佐藤総合計画情報開発センターの吉田佳奈氏、同・センター長の網元順也氏、合同会社ぽの堀田憲祐氏、同・江莱氏

Revitとジェネレーティブデザインによる光環境の最適化に挑むメンバー。左から佐藤総合計画情報開発センターの吉田佳奈氏、同・センター長の網元順也氏、合同会社ぽの堀田憲祐氏、同・江莱氏

【取材先】
株式会社 佐藤総合計画
ホームページ https://www.axscom.co.jp/

【問い合わせ】
Autodesk Revit日本公式Facebook
autodeskrevitjapan@facebook.com
http://www.facebook.com/RevitJapan

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