効率化と付加価値アップによる“攻めの生産性向上”
キタックが目指すBIM/CIM働き方改革(オートデスク)
2020年5月20日

新潟市中央区に本社を置く建設コンサルタント、キタックではBIM/CIMを武器に生産性向上と働き方改革の両立を目指す「キタックBIM/CIM」戦略を推進している。2017年に初めてオートデスクの「AECコレクション」を2本導入した後、着々と社内で業務への活用を進め、現在では50本に。その特徴は、業務の効率化とともに、新サービスによる付加価値アップも目指す“攻めの生産性向上”にあった。

BIM/CIM推進課の池田真彦氏が独学で作成した橋梁上部工CIMモデル。各部材の板厚も道路橋示方書に準拠している

BIM/CIM推進課の池田真彦氏が独学で作成した橋梁上部工CIMモデル。各部材の板厚も道路橋示方書に準拠している

   「5年遅れのBIM/CIM」を急速に挽回

新潟市中央区に本拠を置く建設コンサルタント、キタックがBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)/CIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)ソリューションの活用を本格的に始めたのは、2017年だった。

そのころ地元では、国土交通省のCIM試行業務の入札があっても、応札するのは首都圏などの建設コンサルタントばかりだった。「自分たちは首都圏の企業に5年遅れている」と気付いたことが、BIM/CIMの導入や活用を急ピッチで推進するエネルギーの源になった。

そこでまずはオートデスクのBIM/CIM関連のソフトやクラウドサービスがセットになった「AECコレクション」を2セット導入した。

キタック BIM/CIM推進課 主任 池田 真彦 氏

キタック
BIM/CIM推進課 主任
池田 真彦 氏

冒頭の橋梁上部工のCIMモデルは、キタックBIM/CIM推進課 主任の池田真彦氏が作成したものだ。

池田氏は学生時代、大学院の理学部で岩石学・火山学を専攻し、入社後は防災や砂防分野を担当していた。橋梁の世界は門外漢のはずだった。

その彼が、独学で道路橋示方書をひもときながら、各部の板厚などを調べて忠実にCIMモデル化したのだ。

「詳細な構造物の2D図面を見ても、専門外の私にはどんな構造なのかが理解できないこともありました。そんなときは以前から、3Dデザインソフトで3Dモデルを作って確認するといったことを行っていました。その延長でオートデスクのAECコレクションにあるCivil 3Dを使ってみたところ、自分でもCIMモデルが作れたのです」と、池田氏は語る。

橋梁の専門家でもない池田氏が、これだけ詳細な橋梁のCIMモデルを作成できたことは、社内にいる橋梁の専門家にも衝撃を与えた。そして調査・設計のアプローチのBIM/CIM化を後押しするのに一役買った。

   BIM/CIM推進課が全社をサポート

池田氏が所属するBIM/CIM推進課は、キタック全社のBIM/CIM活用を支える重要な屋台骨となっている。調査、設計から解析、維持管理などの業務にBIM/CIMモデルを活用するためのサポートを行っている。

これまでBIM/CIM導入に取り組んできた同社ICT委員会からも、BIM/CIM推進課に対して要望や助言、提案などを行うようにした。

さらにBIM/CIM推進課やGIS・データベース課からなる横断組織を「ITプロモーティングセンター」とし、BIM/CIMのほか数値解析やGIS(地理情報システム)データベースの構築、治水工学関連の新技術開発を行う体制を整えた。

BIM/CIM推進課を中心とした社内の体制

BIM/CIM推進課を中心とした社内の体制

キタック BIM/CIM推進課長 門口 健吾 氏

キタック
BIM/CIM推進課長
門口 健吾 氏

その結果、4年前は2本だったAECコレクションは、約90人いる技術社員のためにマルチユーザーライセンスを50本まで増やし全員が使える環境にした。

充実したソリューションが自由に使える環境と、手厚いサポート体制により、BIM/CIM活用は社内で急速に普及してきた。

まず、土木設計を担当する技術第二部では、設計の対象となる河川や砂防、道路などの設計にBIM/CIMを活用し、効果を上げている。

冒頭に紹介した橋梁上部工のCIMモデルは、道路の立体交差化事業で作成したものだ。

立体交差化事業のCIMモデルから作成した完成予想図

立体交差化事業のCIMモデルから作成した完成予想図

施工ステップの検討

施工ステップの検討

池田氏の上司で、BIM/CIM推進課長でICT委員長も兼任する門口健吾氏は、キタックで長年、橋梁畑を歩んできた。

「このCIMモデルを初めて見たとき、出来栄えは、概略検討の域を超えていると感じました。このCIMモデルで完成後の維持管理方法を検討することにも使えそうだと思いました」と門口氏は語る。

   砂防や河川、地盤までBIM/CIM化

また、国土交通省のBIM/CIMガイドラインに砂防が追加されたことを踏まえて、砂防堰堤の施工ステップをCIMモデルで可視化した。

「施工ステップの作成には、Navisworksを使用しました。砂防堰堤は、工事用道路の建設も含めて切り土量を最小化することが求められますが、スムーズに検討できました。また2Dの断面図面だけでは発見しにくい地形と構造物の納まりや施工面での課題もCIMモデルのおかげで気づくことができました」と門口氏は語る。

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施工ステップを踏まえた砂防堰堤のCIMモデル。2Dの断面図だけでは発見しにくかった地形と構造物の納まりの問題などにも気づくことができた

施工ステップを踏まえた砂防堰堤のCIMモデル。2Dの断面図だけでは発見しにくかった地形と構造物の納まりの問題などにも気づくことができた

さらに、河川構造物の樋門や樋管を地下構造部まで含めてCIMモデル化したほか、地質調査を担当する技術第一部では、計画中の放水路周辺の地下構造をボーリング柱状図から3Dモデルで可視化した。

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図面だとわかりにくい樋門や地下構造物をCIMモデル化した例

図面だとわかりにくい樋門や地下構造物をCIMモデル化した例

放水路の周辺地盤を3Dモデル化した例

放水路の周辺地盤を3Dモデル化した例

   BIM/CIMを軸にした中期経営目標

キタック 代表取締役社長 中山 正子 氏

キタック
代表取締役社長
中山 正子 氏

こうした社内体制ができあがるまでには、BIM/CIMを中軸に据えた経営戦略の構築があった。キタックのBIM/CIM活用が大きく動き始めたのは、2017年1月に中山正子氏が代表取締役社長に就任してからだった。

同年10月には、同社始まって以来の「中期経営目標」が策定された。その理念は、給料や休暇取得率を上げながら、技術力や業績もアップさせることで、社員や家族が満足できる働きがいのある会社を作ろうというものだ。

「現在、次期中期経営目標策定のために、次世代のリーダーたちで 、会社の“あす”を“か”んがえるプロジェクトを立ち上げました。社内では『あすかプロジェクト』と呼んでいます。仕事生活を『ワーク・ライフ・バランス』と分けるのではなく、ライフの一部がワークであると考えています」と代表取締役社長の中山正子氏は説明する。

その大きな目標の1つが「稼ぐ力の強化」だ。

「受注と利益の確保、新技術の開発、新分野の開拓といった課題の解決には、社内の各部門におけるBIM/CIMの戦略的な活用が欠かせません。そのため、BIM/CIMは一番、注力する分野と考えました」(中山氏)。

BIM/CIMが担う役割は、「成果物、サービス等の品質向上」「業務受注機会の拡大」そして「生産性の向上」だ。これらについて取り組むべき課題を、緊急度に応じてブレークダウンし、12のミッション(作戦)として具体化した。

12のミッション。縦軸に業務の内容、横軸に緊急度をとり、12個のマトリックスでミッションを分類した

12のミッション。縦軸に業務の内容、横軸に緊急度をとり、12個のマトリックスでミッションを分類した

これらのミッションには、AECコレクションを活用した工種別ワークフローの検討や3次元設計、BIM/CIM用のクラウド整備や運用、3Dモデルのデータベース化などが盛り込まれている。クラウドを活用した生産性向上のために、BIM360 Docsを100本導入した。

「2021年までに12のミッションを完了し、2022年からは価値を生み出すクリエイター集団を目指したい」と中山社長は語る。

2021年までに12のミッションをクリアし、2022年からはBIM/CIMで新たな価値を生み出すことを狙う

2021年までに12のミッションをクリアし、2022年からはBIM/CIMで新たな価値を生み出すことを狙う

労働生産性とは、労働によって得られた付加価値を、労働時間で割ったものだ。現在、各社で行われているBIM/CIMによる生産性向上の取り組みは、業務を効率化することによってムダな時間を省く“人工(にんく)削減型”が中心だ。

一方、キタックではBIM/CIMによって新サービスの開発や受注機会を増やす“付加価値増加型”による攻めの生産性向上も視野に入れているのが特徴だ。

働き方改革の実現に向けてキタックでは様々な人材育成の仕組みがある

働き方改革の実現に向けてキタックでは様々な人材育成の仕組みがある

中山社長はもともと大学でアートを専攻し、専門学校の講師や広告代理店、デザイン会社の経営を経て、創業者である父の後を継いで社長に就任するという異色の経歴を持つ。他業界で培った経験と、アートのセンス、そしてわかりやすい言葉で中山社長が推進する「BIM/CIM経営戦略」は、いよいよ佳境を迎えようとしている。

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【問い合わせ】
Autodesk CIM 日本公式Facebook
https://www.facebook.com/Autodesk.CIM

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