清水建設 土木部門のBIM360 Docs活用戦略
ニューノーマルと生産性向上を両立(オートデスク)
2020年8月17日

新型コロナ危機を経験した清水建設の土木部門では、新しい生活様式「ニューノーマル」に対応しつつ、従来よりも生産性を高める働き方改革を追求している。そこでオートデスクのクラウドシステム「BIM360 Docs」を全社で導入し、業務のデジタル化およびテレワーク化を推進するとともに、今後は設計の自動化やAI(人工知能)の導入による省人化も進めていく方針だ。

タブレット端末上に表示された最新のCIMモデルを見ながら施工管理を行う清水建設の施工管理技術者

   これまでの仕事の仕方をゼロベースで見直す

清水建設
土木技術本部 イノベーション推進部
CIMグループ長 柳川 正和 氏

2020年に入ってから、世界中に新型コロナウイルスの感染が広がっている。日本でも感染予防対策のため、在宅勤務やテレワークなどの新しい業務スタイルを実践することが余儀なくされた。

もちろん、建設業も例外ではない。今回の取材も、テレビ会議システムを通じて行われたほどだ。スーパーゼネコンの清水建設といえども、今回のコロナ禍には相当な痛手を被っているに違いない。

そう思っていたところ、清水建設土木技術本部イノベーション推進部CIMグループの柳川正和グループ長は開口一番、「新型コロナ危機を体験して、第2波への感染予防対策をしながら、従来よりも業務の生産性を高められることを確信した」と、意外なことを語ったのだ。

柳川氏は世界がコロナ禍に見舞われる前年の2019年4月、グループ長に就任した。以来、これまでの業務のあり方をゼロベースで見直し、生産性向上を実現するための準備を着々と行ってきた。

そのために欠かせなかったのが「コモン・データ・エンバイロンメント(CDE)」の構築だ。業務に必要なあらゆる情報をデジタル化し、クラウド上で共有。プロジェクト関係者がいつでもどこでも、最新データにアクセスできるようにする仕組みだ。

CIMグループの取り組み

「CDEを実現するために、オートデスクのクラウドプラットフォーム『BIM360 Docs』を全社で導入しました。BIMやCIMのモデルを効率的に扱えるだけでなく、マイクロソフトの『Office365』とも連携しているので、クラウド上に仕事で必要なデータやツールをそろえておくことができるからです」と柳川氏は説明する。

東京・京橋の清水建設本社ビル前に設けたバーチャル工事現場。見慣れた景色がBIMとクラウドでリアルに再現できるのを見て、BIM360 Docsによるテレワークの実用性を実感した社員も多かった

   半年間の試行後、2020年4月から全社で導入

オフィスという場所に集まって仕事を行うスタイルから、クラウド上にバーチャル空間に集まって仕事を行うスタイルに切り替えるため、2019年10月から6カ月間、本社CIMグループと土木東京支店の新横浜駅作業所を対象に試行した。

それと並行して、オートデスクと共同でワークショップを社内で開催した。その内容は紙図面からデジタル図面への移行、クラウドを使った業務ワークフロー、モバイルデバイスの活用、ウォークスルーなどによるプロジェクトの可視化、合意形成の迅速化、そしてデジタル承認にまでわたった。

またソフトの使い方などを学ぶ1時間のWEBセミナーを3回開催し、土木部門の技術者約2000人のうち250人が参加した。セミナーの動画は、イントラネット上にアップし、参加できなかった社員がいつでも見られるようにした。

またクラウドを通じた業務に欠かせない「電子承認」の仕組みも導入した。BIM360 Docsとマイクロソフトのコラボレーションツール「SharePoint 」を組み合わせて実現したものだ。

BIM360 DocsとSharePointを組み合わせた電子承認の流れ

一方、BIM/CIMモデルを使って遠隔地間で打ち合わせを行うVR(バーチャル・リアリティー)遠隔会議も導入した。複数拠点にいる技術者がVR空間に集まり、まるで現場にいるかのような感覚で詳細な議論が行えるため “移動のムダ”が大幅に削減できる。

「このVR会議は土工の工事でうまくいきました。必要な設備は“VR対応”の30万円程度のパソコンとヘッドマウントディスプレー、そしてインターネット回線くらいです。今後、海外プロジェクトでもVR会議を使えば、生産性向上の効果はさらに上がるでしょう」(柳川氏)。

遠隔地にいる技術者がVR空間に集まって会議を行うイメージ

清水建設本社に設けられたVRルーム

このほか、チーム内で業務がどのように進んでいるかを「見える化」するため、業務の内容や工程、期限などをオンラインで可視化する仕組みも整えた。

こうした準備や試行の最中に、新型コロナウイルスが日本に上陸し、瞬く間に全国に感染が広がった。そして全都道府県に緊急事態宣言が発令された2020年4月、清水建設の新しい業務スタイルは全社規模で導入されたのだ。

   ニューノーマルでも従来を上回る生産性を確信

「新型コロナ危機を経験して、事業継続という新たな課題が加わりました。新型コロナ流行の第2波に備えるだけでなく、自然災害への対応やデータのバックアップなどにも対応していく必要性を痛感しました」と柳川氏は言う。

「そこで勤務の場所や時間、デバイスを選ばない仕事の仕方に求められることと、これまで以上のパフォーマンスを実現する業務環境や、勤務スタイルの改善点を見直しました。さらに子育てや介護、ペーパーレス化などの働き方改革を実現できるのではと思ったのです」(柳川氏)。

柳川氏がたどりついた結論が、デジタル化の必要性だった。業務に必要な情報をデジタル化してクラウドサーバーで共有することで、場所やデバイスを選ばない「多様な働き方」が実現できる。また、コミュニケションツールやスマートフォン、iPadなどの携帯端末を導入することで対面式の会議から脱却でき、「移動のムダ」が削減できる。

そして、承認をオンラインで行うことで責任の明確化や工程の可視化が実現でき、万一、オフィスが火事などに見舞われても、紙の書類のように燃えたりしないので安心だ。

現場最前線でも従来は紙図面が使われていたので情報の遅れが課題だった

デジタル化後はタブレットでクラウド上の最新データを確認しながら施工管理が行える

「業務のデジタル化による効果は計り知れません。米国のある大手経営コンサルタントによると、建設業のデジタル化で予想される生産性向上の効果は50%以上ということですが、その実現も夢ではありません」と柳川氏は語る。

   2030年まで持続的な成長を目指す

清水建設の土木部門では以前、設計や施工データの共有が効率的に行われていなかったことによる不具合や、手入力や重複作業による生産性の阻害、そして打ち合わせや移動の時間による長時間労働などの課題を抱えていた。

しかし、BIM360 Docsなどを軸にしたクラウド化の推進により、これらの課題は急速に解決のめどが立ち始めた。2023年度までには完全に解決することをめざしている。

その後、清水建設グループは2030年に向けて連結経常利益を2000億円以上にまで成長させる「SHIMZ VISION 2030」という目標までかかげている。

2030年に連結経常利益2000億円以上を目指す「SHIMZ VISION 2030」構想

少子高齢化が今後、数十年にわたって続く日本で、従来の人海戦術や労働集約型の建設業では、成長を危ぶむ声がある。

しかし、清水建設はデジタル化やIT化で生まれ変わった新時代の建設産業を描き始めている。それは設計と同時にクラウド上で自動的に強度計算を行ったり、ベテラン技術者のノウハウを“AI職員”に移植して、現役の技術者の業務をサポートしたりといった、コンピューターやロボットによる自動化を大幅に取り入れた設計・施工・維持管理のスタイルだ。

清水建設土木部門のCIMグループは、まさにその転換点の改革に取り組んでいる。

CIMグループのスタッフ

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