建築、土木をまたいで構造・設備を詳細にRevitモデル化
意思決定スピードを売るベクトル・ジャパンのBIM戦略(オートデスク)
2020年9月14日

ベクトル・ジャパン(本社:東京都中央区)の守備範囲は建築から土木、プラントまで幅広い。その半面、オートデスクのBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフト「Revit」を使った構造や設備のモデリングは施工図に迫るほどの詳細さを追究している。同社は超リアルなBIMモデルを武器に、プロジェクト関係者の意思決定をスピードアップするという新たな価値を創造した。

配管のフランジとダクトの干渉が気になるくらい精密に作られた意匠・構造・設備のBIMモデル

   他社の図面もBIM化し、意思決定をスピードアップ

「それまで悠長に構えていた電気設備の担当者に、構造や配管を精密に描き込んだBIMモデルを見せて『配線のラックはどこに取り付けますか』とか『このスペースだと点検者が歩くとき狭すぎませんか』と聞くと、急に焦り出しました」と笑顔で語るのは、ベクトル・ジャパン代表取締役の安藤浩二氏だ。

構造部材と給水管を精密にBIMモデル化した例。これを見た電気設備の担当者は配線ラックをどこに付けようかと、焦り始めたという

ベクトル・ジャパンはオートデスクの「Revit」を含むBIMソリューション「AECコレクション」を15ライセンスのほか、「AutoCAD」と「AutoCAD LT」を30ライセンスずつ、そしてCGムービーを作成する「Maya」を4ライセンス導入している。

これらのツールを活用して、ベクトル・ジャパンは自社が担当する構造部分だけでなく、他社が設計を担当している配管やダクト、バルブなどの図面も取り寄せ、一つのBIMモデルにまとめている。

他社が担当する部分の図面をもらい、一つのBIMモデルにまとめて干渉などの問題を明らかにしていく

専門工事会社の担当者は、自分の担当外の工種にはあまり関心を持たないことが多い。「しかし、詳細なBIMモデルを各社担当者が見ると『このままだと将来、大変な手戻りになる』と気づき、“スイッチ”が入るようです」(安藤氏)。

また、意匠設計者やゼネコンが計画したマンホールが、梁の上に重なっていた場合もある。こうした問題を説明するときも、BIMモデルがあれば一目瞭然で、意匠設計者やゼネコンもすぐに修正に応じてくれる。プロジェクトの現状を、RevitやBIM360を活用して見える化すると、工事関係者の意思決定がスピーディーに行われ、一気にプロジェクトが進むのだ。

「BIMモデルはRevitで作成し、クラウドシステム『BIM360』上で管理しています。そして、図面やパースはプリントアウトして配っています」と安藤氏は説明する。BIM360は権限設定でダウンロードはできないが、閲覧のみ可能という設定にすることもできる。

「これまでは『下請けにはプロジェクトの情報を見せない』ということで優位性を保ってきた会社もありましたが、それとは180度違う設計スタイルを実践しています。クラウドに情報を上げて関係者で共有する方が、確実に生産性は高まります」と安藤氏は力説する。

オフィスの一角には安藤氏が信奉する稲盛和夫氏の言葉(左)や将来の具体的目標(右)などが掲げられ、経営ビジョンを社員と共有している

BIMモデルで課題を分かりやすく見える化し、工事関係者の意思決定を迅速化するノウハウは、工期短縮や手戻り防止に効果があることが評価され、最近ではフィーをもらってプロジェクト管理を担当する、つまりBIMマネージャー的業務が増えてきたという。

   ヒューマンエラーの防止がBIM導入の動機に

安藤氏がプロジェクトのスムーズな進行に心血を注ぐ理由は、海外現場での経験にあった。大分県の中津工業高校土木科を卒業後、就職した中堅ゼネコンでは、サウジアラビアの現場に派遣された。

その後、独立して1989年にベクトル・ジャパンの前身となる設計会社を立ち上げた後は、もともとの専門である土木に加えて建築の意匠、構造、設備の設計も手がけるようになった。

Revitによって作成された配管やダクト、構造のBIMモデルをチェックする安藤氏

安藤氏のデスク脇には、今でもドラフティングマシンが置かれている。新入社員時代にサウジアラビアに派遣された当時の原体験を大事にしているかのようだ

今では約50人の社員を東京や中国・大連の事務所に擁し、公共事業の浄水場や下水処理場、排水機場といった大型物件から、ハウスメーカーの物件、そして民間の集合住宅に至るまで、建築から土木、設備までを幅広くカバーする設計会社へと成長した。

しかし、サウジでの海外工事経験が、安藤氏の原体験となって、今でも3DやBIMの活用に影響を与えている。それは現場監督としての赴任だったが、厳しい工程を守るために現地ワーカーと一緒になって鉄筋曲げ加工やハッカーを持って鉄筋組み立てまでをおこなったことだ。設計者自らが鉄筋曲げ加工や組み立てを経験することは極めてまれなことではないだろうか。その経験がRevitでの土木配筋図作成につながっていく。

「日本の公共工事では、設計が適切だったのかどうかをチェックする会計検査が行われます。例えば土木構造物では鉄筋の長さについてミリ単位での規定があり、1カ所でも数量拾いなどに間違いが発見されると全部の設計がやり直しになり、遅れが出ます。そんなヒューマンエラーをなくすことが、3DやBIMを活用する動機となっています」と安藤氏は言う。

「すべての鉄筋や継ぎ手まで描く土木の配筋図が基本です。整合性や施工が可能な施工図の作成にはこだわっています。4年の開発期間を経てようやく今、RevitやBIM360で実現できるようになりました。

Revitですべての鉄筋をモデル化し、数量拾いの間違いがないかを確認する

2D CADで描いたとしか見えない土木配筋図、しかし全てRevitの3Dで作成されている

   若手社員を引き寄せるBIMの積極活用

2015年にはRevitを導入し、本格的に活用を始めた。オートデスクの「エキスパートエリート」の資格を持つ、プランニングピープル(本社:福岡市中央区)の栗原洋一代表取締役を講師に招き、社内でRevitの講習会を行った。

「Revitでファミリの扱いからモデリング、図面作成と2~3月の短期間トレーニングでスキルを身につけ、実践で活用している」と安藤氏は言う。

その努力が実り、わずか3~4年でAutoCADで描いたような図面をRevitでも描けるノウハウが構築されたのだ。現在、意匠・構造・設備・土木の幅広い分野で現在15名がRevitで設計を行っており、今後も数を増やす予定だ。

BIMという新技術を積極的に導入する同社の社風は、大学や工業高校の土木や建築関連の学科はもちろん、専門外の卒業生も自然に引き寄せる結果となった。人手不足に悩む企業が多い中、同社には続々と若い社員が集まってくる。平均年齢は27.4歳だ。

そしてアットホームな家族的企業風土によって、日本はもちろん中国オフィスの従業員定着率も高くなっている。

Revitを使いこなすために社内に設けたBIM講習室

Revitの細かい画面をスクリーンに映し出すため、天井には「4K」タイプのプロジェクターを設置した

若手社員が活躍する東京オフィス

   コロナ禍で新たなBIMの可能性を発見

2020年の春から日本を襲ったコロナ禍は、ベクトル・ジャパンの業務にも影響を与えた。その中で、BIMの新たな可能性も発見したという。

「オートデスクのクラウドシステム『BIM360 Docs』とマイクロソフトのウェブ会議システム『Teams』を使って、在宅勤務を行いました。ごく普通のノートパソコンでもBIMモデルをスムーズに扱うことができ、こんなにスムーズに業務が行えるとは思いませんでした」と安藤氏は驚きを隠さない。

「設計段階で使ったBIM360 Docsの効果を認めた建設会社が、施工段階でも引き続き使いたいという要望がありました」(安藤氏)。

さらに安藤氏はBIMを活用した新ビジネスの展開にも期待を寄せている。

「道路の下には上下水道や電気、ガス、通信ケーブルなどが埋まっていますが、それぞれの管理は別々の企業体が行っています。これらをBIMモデルで管理できるようにすると、工事の際の位置確認や試掘などの作業が大幅に減ります。このようにBIMモデルを『資産』として作るビジネスの可能性もありそうですね」(安藤氏)。

「古いビルを丸ごとBIMモデル化して維持管理に使うこともできます。このビジネスは意匠、構造、設備をすべてBIM化できる能力が求められます。今後弊社は、建築に限らず全てのインフラストラクチャーを3D化する情報企業へと発展させていきます。」と、安藤氏には自分の人生を集大成する、新しいBIMビジネスの構想がとめどなくわき上がってくるようだった。

【問い合わせ】
Autodesk Revit 日本公式Facebook
autodeskrevitjapan@facebook.com
http://www.facebook.com/RevitJapan

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