毎年2%の省エネを!「縮小社会」はBIMやHEMSで実現できるか
2012年7月10日

管理人のイエイリです。

東日本大震災での原発事故は、社会や文明の転換点になると指摘する有識者は多くいます。では、今後、どのような社会を目指すべきなのかという具体的な話になると、なかなか思いつかないかもしれませんね。

原発はいろいろな面で危険なので、火力発電を増やせばいいかというと、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料には限りがあり、地球上の各国の経済発展や人口増加が幾何学的に進めば、今後、数十年間で底をついてしまう可能性があります。

そのとき、残された化石燃料をめぐって戦争が起こることは、過去の歴史が証明していると言っても過言ではありません。では、原発にも頼らず、限りある化石燃料も大事に使いながら、どのようにして人類は生きていくべきなのでしょうか。

こうした難問に対して、京都大学名誉教授の松久寛さんは具体的な提案をしています。

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

「縮小社会」

 

という新たな社会像なのです。

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「縮小社会」について語る松久寛さん(左)。7月7日、東京・日本橋で開催された佐藤R&D 第6回技術講演会(右)で(写真:家入龍太。以下同じ)

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松久さんらが出版した著書「縮小社会への道」(日刊工業新聞社B&Tブックス。1600円+税)

化石燃料の採掘可能年数(可採年数)があと100年としたとき、経済成長率が2%だとすると化石燃料の使用量もそれだけ増えるため、54年後には枯渇してしまうことになります。

「ところが、経済成長率をマイナス1%に毎年縮小させることで、可採年数は1年後にも100年分、2年後にも100年分が残っていることになり、永遠に100年間残っていることになる。マイナス2%にすると、逆に可採年数は年々増えていくことになる」と松久さんは語ります。これが「縮小社会」の根幹となる考え方です。

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経済成長の化石燃料の可採年数の推移について説明する松久さん。経済成長をマイナス2%とすることで可採年数は毎年増えていく

1972年に「ローマクラブ」というシンクタンクが発表した「成長の限界」という報告書では、人口増加や環境破壊が現状のまま続けば資源の枯渇や環境の悪化で100年以内に人類の成長は限界に達すると警鐘が鳴らされました。現在の地球の状態は、ほぼこの報告書が予言した通りに推移していると言ってもいいでしょう。

江戸時代を振り返ってみると、燃料は雑木林から採れるまきや木炭を使い、木は30年間切ってはいけない、子孫のために植林するといったルールを設けてサステナブルな社会が実現していました。

社会経済の縮小を目指すというと、「江戸時代に戻るつもりか」などと言われてしまいそうですが、化石燃料の使用を減らしながら人口も徐々に自然減させながら、自然エネルギーの利用を徐々に増やしていくことで、

 

「ネオ・江戸時代」

 

とも言えるエコで快適な社会にソフトランディングさせることもできるのではないでしょうか。

日本では少子高齢化で人口が減り始めており、金利も実質的に「ゼロ」になっています。滋賀県の嘉田由紀子知事は「もったいない」をスローガンに当選しました。既に日本は「縮小社会」を歩みつつあると、松久さんは指摘しています。

昨年は関東地方で15%もの節電を実現できました。この実績にBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)やBEMSやHEMSなどのエネルギー管理システム、太陽光発電や蓄電技術などを組み合わせることで、化石燃料の使用を毎年2%ずつの省エネを積み重ねていくことはそれほど難しくないかもしれませんね。皆さんはどのようにお考えでしょうか。

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