管理人のイエイリです。
街なかのちょっとした移動手段として注目されているのが、電動キックボードです。
最近、公道での走行が緩和されており、原付免許があればナンバープレートを取得し、ヘルメットを着用すれば街なかを走行することができます。また、産業競争力強化法に基づく特例措置による実証事業区域内では、自動車免許があればヘルメットなしで公道を走行できます。
こうした“モビリティー革命”を、新たなインフラビジネスの商機ととらえた大林組は、東京都清瀬市にある技術研究所で早くもキックボードを走らせ、実証実験を行っています。
いったい、何が新たなビジネスチャンスなのかというと、
ナ、ナ、ナ、ナント、
ワイヤレス充電施設
なのです。(大林組のプレスリリースはこちら)
手軽に走れるキックボードですが、問題はバッテリーがなくなったとき、どうするかです。電動アシスト自転車のようにバッテリーパックを交換したり、電線をつないで充電したりするのは、手間やコストがかかりすぎます。
そこで大林組と古河電気工業は、「ワイヤレス充電ポートシステム」を開発しました。古河電工の樹脂製ケーブルトラフ「グリーントラフ」を地下に設置し、その中に送電装置を収めたものです。その上にキックボードを停めれば、キックボードの受電機との間でワイヤレスに電力が送信され、自動的に充電される仕組みです。
両社は電動マイクモビリティのシェアリングサービスを提供するLuup(本社:東京都渋谷区)の協力を得て、2022年3月まで、充電と走行の実証実験を行っています。
今後、最適な充電システムやインフラの研究、改善を進め、2025年度に製品化することを目指しています。
一方、建築分野でもワイヤレスで電力を送るシステムの開発が進んでいます。大成建設は三菱電機と共同で、マイクロ波を使ったワイヤレス給電システム「T-iPower Beam」を開発。2021年12月から2022年2月まで、横浜市戸塚区にある大成建設の技術センター ZEB実証棟で実証実験を行っています。
「T-iPower Beam」は、自動ロボットに設置した小型送電装置から、マイクロ波を発信して最大25Wの電力を送信し、ワイヤレスで建物内の受電装置に電力を送れるものです。
送電時にマイクロ波が拡散しないように、指向性の高いビームを作れる5.7GHz帯の電波を使用し、ビームを制御できるようにしています。
また、受電装置はバッテリーと合わせて
建材一体型
を使用し、建物内外へのマイクロ波の漏洩を防ぎます。(大成建設のプレスリリースはこちら)
ワイヤレスによる電力供給のターゲットは、スマートシティーやZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)に不可欠な設備である無数のセンサーやモバイル機器です。
これらのデバイスに電力を供給するために、配線や乾電池を使用すると、工事の手間や設備スペースが必要なだけでなく、電池交換の手間などメンテナンス面でも課題が指摘されていました。
そこでマイクロ波ワイヤレス送電装置を、警備や清掃などを行うサービスロボットに搭載し、建物内を移動しながら各所のセンサーを充電して回るといった運用方法が考えられています。
上記のほか、さらに大がかりな施設となると、大林組、関西電力、ダイヘンが開発中の電気自動車(EV)用のワイヤレス給電システムがあります。道路下に送電装置を仕込んでおき、EVは道路を走りながら充電できるという壮大な計画です。(大林組のプレスリリースはこちら)
街中や建物内に設置される電力設備やセンサーは、その「設置工事」がかなりの割合を占めています。将来、数多くのデバイスが取り付けられるようになると、建設会社の新しいインフラビジネスとして、これらの技術開発は大いに成果が期待できそうです。