管理人のイエイリです。
清水建設が施工を担当するある大規模土木現場では、約40台のダンプトラックが日々、建設発生土を外部の搬出場所に運搬する作業を繰り返しています。
両地点を結ぶルートには、一般道路と高速道路、そして待機場所を経由して現場に向かう3つのルートがあります。
これまではダンプトラックごとに当日の走行ルートを固定して建設発生土を運搬していましたが、渋滞状況が変わったり、突発的なトラブルが発生したりしたときに柔軟にルート変更ができないという課題がありました。
しかし、渋滞情報などを総合的に考慮して、コンピューターですべてのダンプトラックに対して最適なルートを求めるのは、大変な時間がかかってしまいます。
この問題を解決するため、同社は、
ナ、ナ、ナ、ナント、
量子コンピューター
を活用し、瞬時に最適ルートを求める技術を開発したのです。(清水建設のプレスリリースはこちら)
従来のコンピューターは、計算の単位に「ビット」を使い、半導体の上に多数のビットを配置し、すべての組み合わせを一つ一つ、計算して、最も良い答えを求めていたので大変な計算時間がかかってしました。
一方、「量子コンピューター」は、ビットの代わりに「量子(=電子)」を使い、物理現象を利用して、最適な組み合わせを求める問題などを格段に速く解けるのが特長です。このため、ハードウエアには超電導など特殊な環境下で動く、大規模で特殊なものを使います。
今回、清水建設は、グルーヴノーツ(本社:福岡市中央区)が提供する、量子コンピューターによるクラウドプラットフォームサービス「MAGELLAN BLOCKS」を活用し、同社と共同でダンプトラックによる建設発生土の運搬計画を最適化するシミュレーション技術を開発しました。
量子コンピューターでの解析はまず、出発地や到着地、両地点を結ぶルートの数などを「MAGELLAN BLOCKS」に登録します。
次に、各ダンプトラックに搭載されたGNSS(全地球測位システム)のデータから、極端に低速になるエリアや時間帯別の滞留量などを分析し、ルートを最適化する計算モデルを構築しました。
この計算モデルを「MAGELLAN BLOCKS」にインプットし、ダンプトリックの位置や待機場所での滞留台数、各ルートの所要時間などのリアルタイムに入力すると、瞬時に最適なルートが算出できます。
このシステムにより、ダンプの運行台数を変えなくても、1日当たりの運搬量は
約10%も増加
することが確認できました。
これはかなりの生産性向上につながりますね。言い換えれば、量子コンピューターの力でダンプ約4台分の運搬が行えたことになります。
今後、清水建設はドライバーへのルート通知方法などを検討し、この技術の実用化を目指すとのことです。
造成現場では、切り土や盛り土を行うのに、重機をどんな順序で動かせば最も少ない工数で目的の造成が行えるかという問題があります。
このように従来のコンピューター解析では難しかった問題も、量子コンピューターを使えば“水が流れるように”、最適な方法が見つけられるようになるかもしれませんね。