管理人のイエイリです。
鉄筋コンクリートの建物や構造物の施工管理で、大変なのがコンクリート打設前に配筋検査を行い、写真に残しておくことです。
縦横に組まれた鉄筋だけに、手前と奥の鉄筋が重ならず、ピントや明るさなどが問題ない写真を撮るのは至難の業です。
そこで、現場では多めに写真を撮っておき、現場事務所に帰ってきてから、べストな写真を選んで工事写真帳に記録する、という手間ひまのかかる作業が必要でした。
この作業を省力化しようと、前田建設工業、アクセンチュア(本社:東京都港区)、ピクシーダストテクノロジーズ(本社:東京都中央区)が開発したのは、
ナ、ナ、ナ、ナント、
360度カメラとBIMモデル
を重ね合わせて配筋検査を行うシステムだったのです。(前田建設工業のプレスリリースはこちら)
これまでの配筋検査は、現場で配筋状況を目視によって鉄筋径や本数、ピッチ、かぶり厚などを確認しながら、工事写真を撮って記録する、という方法でした。そのため、現場での写真撮影に多くの時間が必要でした。
一方、今回、3社が開発したシステムは、まず、360度カメラで動画を撮影しながら現場内を歩き回り、配筋全部を撮影します。このとき、現場内の位置が分かるように、床などにマーカーを張っておき、動画にも映し込みます。
次に現場事務所のパソコンに360度動画を読み込んで、コンクリート部材のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)モデルと重ね合わせて、配筋状況をチェック。動画をコマ送りしてベストな写真を切り出すというわけです。
実物の現場状況とBIMモデルを重ね合わせるという点では、AR(拡張現実)と似ていますが、「現場でのリアルタイムな目視」ではなく、事務所に戻ってから室内で行える“時間差AR”である点が違います。
現場でいろいろなモノを持ちながら、立ち止まって検査や撮影を行うのは重労働で、複数の人が写真の撮り忘れなどがあると大変です。それに比べて、この方法だと事務所内で快適かつ効率的に検査が行えそうですね。
また、360度動画を残しておけば、トレーサビリティーの点でも安心です。
このシステムを現場で試験したところ、通常の配筋検査方法に比べて、
撮影時間が80%も削減
されたことが確認できたそうです。
前田建設工業は2024年4月に、このシステムを社内で全国展開する目標です。
動画を使って「現場で目視しない」検査方法は、公共工事などではまだ認められていません。
しかし、確認審査機関でもリモートや遠隔臨場による中間検査や完了検査を試行する取り組みが進められており、その生産性向上効果も認識されつつあります。
このような目視でなく、データ上でチェックするシステムが普及すると、建設業の人手不足問題や長時間労働、働き方改革などの解決に役立ちそうですね。