管理人のイエイリです。
イタリアのWASP社は、2012年から土やわらなどの天然材料を使った建設用3Dプリンターを開発しています。
当ブログでも2016年1月6日付けの記事や、同7月25日付の記事で、イタリア北西部のマッサ・ロンバルダという町で行われている建設工事の様子をお伝えしました。
あれから約3年、このプロジェクトはどうなったのかと思っていたところ、画期的な進歩を遂げていたことがわかりました。
2018年10月6日と7日に現地で行われたイベントで、
ナ、ナ、ナ、ナント、
土やわらを3Dプリンター
で造形した世界初の家を公開したのです。(プロジェクトの詳細はWASPのウェブサイトで)
「ライス・ハウス」と名付けられたこの家は、WASP社が開発したクレーンタイプの新型3Dプリンターによって造られました。
造形用の材料の内訳は、現地発生土が25%(うち、粘土30%、シルト40%、砂30%)、稲わらを破砕したものが40%、もみ殻が25%、そして水硬性石灰が10%となっています。
これらの材料をすり棒で混合し、均一にしたものを3Dプリンターのノズルから吐き出して、壁の断面に沿って数センチ厚ごとに積層していきます。
壁は上から見ると、蜂の巣状の空間が空いており、ここにもみ殻を投入して断熱性・遮音性に優れた壁になります。屋根も木材と石灰、もみ殻で断熱しているので、冷暖房は不要とのことです。
造形された壁は、土とわらで積層されたとは思えないほど、緻密で高精度な仕上がりになっています。ここに技術の進歩が感じられますね。
家の床面積は30m2で、3Dプリンターによる造形にかかった期間は10日間で、材料にかかった費用はわずか900ユーロ(約11万6000円)でした。
また、今回、クレーン型の3Dプリンターになったことで、新たな可能性が生まれました。
従来の3Dプリンター「ビッグ・デルタ」は3本の柱から、造形用のノズルをつり下げるタイプでしたが、今回、開発された新型プリンターは、タワークレーンのような構造になっています。
中心に設けられた柱に沿って昇降しながら、周囲に設置された3本の柱の外側にも造形できます。(つり下げ式は柱の内側に造形範囲が限られる)
この特徴を生かすと、3Dプリンターを
無限に拡張
することができるのです。
造形範囲が重なる部分を利用して大きな建物を造ったり、多数の建物を同時並行で造形したりして、工期短縮を図ることも可能になりますね。
土はもともとある材料で、それ以上劣化しないという特徴があります。そのため、土で造った建物は100年以上もつと言われています。
低コストで環境にもやさしい土の家は、新たな建設技術として普及しそうですね。