管理人のイエイリです。
これまで建物のCAD図面を作成するため、人件費の安い海外に外注するケースが多くありました。しかし、CADで作図する担当者が地理的に離れていたり、日本の建築事情にうとかったりするため、その後の手直しに日本国内で結構な手間ひまがかかっていたのも事実です。
こうした背景の中、ミサワホームはデジタルビジョンと共同で、デジタルビジョンの沖縄CADセンター(沖縄県うるま市)内にミサワホーム分室を開設しました。
その狙いは、
ナ、ナ、ナ、ナント、
ミサワホームの設計要員
を育成することにあるのです。
デジタルビジョンはうるま市や周辺地域の在住者を中心に20人のスタッフを1年間雇用し、基礎教育やOJT教育、実務レベルのアドバンス教育のほか、ミサワホーム仕様の住宅設計CAD と汎用BIMの研修をみっちりと行います。
研修を受けたスタッフは来年度以降も雇用され、デジタルビジョンのCAD センターでミサワホームからの設計業務などを担当することになっています。
沖縄県は有効求人率が全国でワーストワンの就職難に悩んでいます。そこでデジタルビジョンは2010年にうるま市内にBIMセンターを開設し、就職希望者に対するBIM教育などを行ってきました。その成果は、受講者全員が就職を果たすなどの実績として表れています。
一方、ミサワホームは災害時などに事業を継続するための「BCP」や「BCM」の観点から、設計業務の国内第2拠点の開設を検討してきました。そこで、両社がうるま市の公募事業である「地域人材育成事業」と「建築CAD技術者育成事業」を活用し、今回の取り組みが実現したのです。
デジタルビジョン沖縄CADセンターがある沖縄IT津梁パークのインテリジェントビル(写真:デジタルビジョン。以下同じ) |
デュアルモニター付きの高性能パソコンが並ぶミサワホーム分室。8月1日に行われた開所式にて |
ミサワホーム分室には、高性能パソコンとデュアルディスプレーが用意され、ミサワホーム本社のCADセンターと同等の設備を備えています。
研修期間中はデジタルビジョンからは統括管理者と補助講師2人、ミサワホームからは意匠設計や構造設計の指導を担当する熟練技術者2人の合計5人が常駐して教育に当たる予定です。
ミサワホーム分室が設けられるのは沖縄IT津梁パーク内に2009年に完成したインテリジェントビルです。非常用発電機を備えており、地震災害の発生リスクが低く、電力供給も安定しています。
この事業は1年だけで終わるのではありません。スタッフの採用規模は
段階的に増員を計画
しており、雇用問題に悩むうるま市や周辺地域の雇用を支えるプロジェクトとして期待されています。
今回のBIM教育の特徴は、ミサワホームという特定の企業の仕様にカスタマイズされた研修であることです。仕事をアウトソースする側から見ると、これほど安心できる発注先はありません。
図面の手直しコストや手間までを含めると、人件費が安い海外よりも沖縄の方がかえって有利という見方もあります。そのうち、沖縄はBIMの一大拠点になるかもしれません。