管理人のイエイリです。
コマツの茨城工場(茨城県ひたちなか市)では、海外向けの大型建機を作っています。海外の鉱山などで使うダンプトラックなどの大型建設機械は受注生産が多く、設計のたびに運転席からの前後左右の視界や、整備のしやすさなどを検討しなければいけません。
設計や開発の効率化が課題となっていた同工場内の試作工場に、昨日(12/12)、画期的な装置が導入され、稼働を開始しました
その装置とは、
ナ、ナ、ナ、ナント、
建機を実物大で立体視
できる「4面VR(バーチャルリアリティー)システム」なのです。
「4面VRシステム」での作業風景(写真・資料:コマツ。以下同じ) |
立体視の仕組み |
4面VRシステムとは、正面、左右面、床面の計4面のスクリーンに建機を立体投影し、その中に運転者や整備者が実際に入り込んだ感覚を体感できるものです。実物大で立体的に見えるので、あたかも実物の建機を見ているようにデザイン性の検討や、運転席からの前後左右の視界チェックなどが行えます。
ポンプやエンジンの点検についても、実物を扱うかのように確認できるので、 整備のしやすさや修理方法などの検討も正確に行えます。また、運転者や整備者の動きや視点、機械の動きを、第三者が別のモニターで客観的に確認することも可能です。
スクリーンの大きさは横幅3.8m、高さと奥行きがそれぞれ2.4mずつで、大型のダンプトラックやホイールローダーなどの機械を実物大で投影することができます。
映像の投影には、4台の米クリスティ・デジタル・システムズ社製プロジェクターを使用し、6台の独ART社製モーションキャプチャー用光学式カメラで人の動きを追跡します。
また、立体視処理にはNVIDIA社のGPU最上位機種を搭載した日本SGIのビジュアライゼーション専用システム「Asterism(アステリズム)」を4台導入し、自動立体表示化ソフトは、仏TechViz社の「TechViz XL」を利用しています。
このシステムを使うと、パソコンで作成したCADモデルをそのまま
バーチャルリアリティ空間
に表示することができ、CADデータを作成した後にすぐ、検討を始められます。
なお、コマツは2004年からすべての新機種開発を3次元CADで行っており、2011年5月には大阪工場に4面VRシステムを初めて導入し、開発期間の短縮や試作機開発コストの削減など多くの効果が出ているそうです。
CADデータをスクリーンに投影して外観などの検討を行った例(左)。メンテナンス性の検討を行った例(右) |
これくらいの大きさであれば、建築設計事務所や建設会社でもオフィスの一角に作ることができ、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の設計検証に使えそうですね。
4つのスクリーンがあることで、部屋のインテリアや居心地、色彩に包まれた感じを実物さながらに検討したり、建材などのモックアップ代わりにしたり、建設現場での施工手順や安全性の検討したりと、いろいろな用途に活用できそうです。