管理人のイエイリです。
大学や専門学校でも、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の教育が行われるようになりました。
関西大学総合情報学部でも12月5日の3時限目に、「建築業界とBIM」という特別講義が行われました。
受講者数は、
ナ、ナ、ナ、ナント、
約200人
という、かなり大規模な授業となりました。
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関西大学で行われた「建築業界とBIM」の特別講義が行われた教室には、約200人の学生が詰めかけた(写真:家入龍太。以下、同じ) |
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講義を行う内田公平さん(右)と小林美砂子さん(左) |
講師を務めたのは、Revitユーザ会で副会長を務める内田公平さん(鴻池組)と関西地区のエリアリーダーを務める小林美砂子さん(亀田正也建築事務所)です。
「建設業界でBIMが普及していることを学生たちにも教えて就職などに役立ててほしい」、と願う2人がボランティアを買って出て、この日の特別講義が実現しました。
まず、内田さんがBIMの最新動向を紹介しました。従来の図面に代わって、コンピューター上で3次元の建物モデルを作り、その中に建築に関する属性情報をインプットすると、従来の方法では考えられなかったような短時間でスピーディーに設計が行えることや、建物モデルを解析やシミュレーションに使うことでエネルギー消費量や建築コストなどがすぐに計算できること、そして部材の加工や維持管理にも生かせることなどを豊富な実例を交えて解説しました。
特に、総合情報学部のある高槻キャンパスをグーグルアースで表示し、その一角にバーチャルな“新校舎”を建てて、「建設会社ではこのようにして顧客に建物を提案する時代になっています」と説明すると、学生も興味津々の様子でした。
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高槻キャンパスの一角に出現した新校舎に学生も興味津々 |
続いて、小林さんがRevit Architectureで住宅を一からモデリングしていく様子をデモンストレーションしました。あっという間に間取り図ができたり、窓やドアなどが壁にすっぽりとはまったりするBIMソフトの面白さが学生にもよく伝わったようでした。
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Revit Architectureで住宅をスイスイ設計していく過程もデモンストレーション |
この授業は、関西大学総合情報学部の田中成典教授が担当する「知識情報処理」という授業の一環として行われたものです。講義の最後での質疑応答では、学生から「建築分野の設計がこんなに進んでいるとは驚いた」などの感想が相次ぎました。
また田中教授からは「BIMはCGと似ているが、映画やアニメの世界に使われる仮想的なものとは違い、建築設計の技術データが埋め込まれているところが違う」というコメントがありました。
授業が終了すると、2人の講師は学生からの質問攻めにあうほどの人気ぶりでしたので、急きょ、今週も第2回のBIMの講義が開催されることになりました。
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講義終了後、質問攻めにあう講師(左)。右から田中成典教授、講師の小林美砂子さん、同・内田公平さん(右) |
この日は、もう一つ、BIMに関するトピックスが別の講義でも登場しました。私が非常勤講師として担当している「ベンチャービジネス論」ではこの日、ベンチャー企業が競争相手に勝ち残っていくための競争戦略について説明しました。
その中で、インテリアデザイナーとして米国での就職を目指す学生の
BIMによる差別化
について紹介したのです。
“教材”になっていただいたのは、当コーナーでもこれまで数回、登場しているサンフランシスコ州立大学でインテリアデザインを学ぶ小林思保美さんです。実は、先の授業で講師を務めた小林さんの長女なのです。
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授業で使用した資料。サンフランシスコ州立大学で学ぶ小林思保美さん(左)と大成建設でのインターンで作った作品(右) |
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インテリアデザイナーのBIMによる差別化戦略(左)。授業終了後の教室(右) |
インテリアデザイナーがBIMのスキルを身につけることで、建築設計者が作るBIMモデルの中に直接、インテリアデザインを行えるようになったことを大成建設で行ったインターンの作品によって紹介しました。
インテリアデザイナーが真似されにくいBIMのスキルを獲得して存在価値を高め、就職戦線を有利に戦うための「一点集中戦略」の事例です。自分たちと同じ大学生が就職のために戦略を持っていることは、受講した約300人の学生にも刺激になったようでした。
BIMの講義は特にない学校でも、近くのBIMユーザーを招いて特別講義を実施してみてはいかがでしょうか。きっと学生たちは身を乗り出してくるに違いありませんよ。