管理人のイエイリです。
詳細設計用BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフト、「TeklaStructures」を開発・販売するテクラ主催の世界的コンテスト「Tekla Global BIM Awards 2012」が開催され、各部門の最優秀プロジェクトが発表されました。
今回のコンテストは「BIMプロジェクト部門」、「鋼構造部門」、「コンクリート部門」の3部門に世界各国から42のプロジェクトが参加し、特設ウェブサイトで投票を募った結果、
ナ、ナ、ナ、ナント、
2300票以上の投票
が集まったのです。
その結果、選ばれた各部門の最優秀賞と特別賞1件をご紹介しましょう。
BIM部門の最優秀賞はエンジニアリング会社であるマケライネン(Mäkeläinen)社が手がけた「ダービー・ビジネス・パーク」です。構想段階から詳細設計までを一貫してBIMで行い、RC構造の鉄筋に至るまでをBIMモデル化しました。
BIMを空調設備や電気設備の設計のほか、建設現場でも活用した結果、非常に厳しいスケジュールであったにもかかわらずスケジュール通りに完成させることができました。
BIM部門の最優秀賞を獲得したダービー・ビジネス・パークの現場(写真・資料:テクラ。以下同じ |
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RC構造の鉄筋も詳細にモデル化されている | |
建物全体(左)とプレキャストコンクリートパネル(右)のBIMモデル |
鋼構造部門の最優秀賞に選ばれたのは、ワトソン・スチール・ストラクチャーズ(Watson Steel Structures )社が設計した「エミレーツ・エアライン テムズ川 ロープウエー」プロジェクトです。
テムズ川上空を横断するこのロープウエーを支える高さ80 メートルの塔3本は、ディテールまで忠実にモデル化され、そのデータを製作にも活用したため、現場での部材取り付け作業時も不具合はなかったそうです。
鋼構造部門の最優秀賞、「エミレーツ・エアライン テムズ川 ロープウェー」 |
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タワーのBIMモデル | |
タワー基礎部のモデル |
コンクリート部門の最優秀賞に輝いたのは、フルクス・デルフィ・エンジニアリング(Hurks Delphi Engineering)社が設計した「ユトレヒト駐車場」プロジェクトでした。大部分の床面が傾斜した形状を持つ、大規模な駐車場です。
鉄筋部材は、TeklaStructuresから出力されたデータを使って自動加工されたそうです。進んでますね。
コンクリート部門最優秀賞の「ユトレヒト駐車場」の全景CG(左)と現場写真(右) | |
BIMモデルの全景(左)と鉄筋の詳細モデル(右) | |
鉄筋はTeklaStructuresのデータで自動加工された(左)。組み立て式型枠と思われるもの(右) |
そして、特別賞にはポウマ(Pouma)社とイエマンツ(Iemants)社による「ルイ・ヴィトン現代美術館」プロジェクトが選ばれました。驚くほど複雑な構造を持つ建物ですが、プロジェクトチームが一貫してBIMを活用した結果、建設が可能になりました。
ちなみに、ルイ・ヴィトン現代美術館のプロジェクトは、昨年(2012年)のAIA(アメリカ建築家協会)のBIMアワードにも選ばれています(関連記事)。
特別賞に選ばれた「ルイ・ヴィトン現代美術館」 | |
基礎のBIMモデル(左)と外装の詳細BIMモデル(右) |
さすがにTeklaStructuresのユーザーが競うコンテストだけあって、BIMモデルの詳細度が違いますね。
テクラはプレス向けに数十メガバイトもある詳細な画像を公開しています。その1つを開けてみてビックリ。
ナ、ナ、ナ、ナント、
スタッド1本までBIMモデル化
されていたからなのです。
スタッド1本からボルト1本までモデル化されていた「キャピタル・マーケット・オーソリティー」オフィスタワーの詳細なBIMモデル |
スタッドなどの詳細部材はモデルが大きくなりすぎるからという理由で省略されることが多いのではないでしょうか。しかし、数が多いだけに、もし施工中にスタッドが他の部材と干渉して搬入できないといったことがあれば、手直しのため、工期は大幅に遅れてしまいます。
細かいところまで忠実にBIM化し、フロントローディング(業務の前倒し)を徹底しようという“BIM職人”の心意気を感じました。