管理人のイエイリです。
「日本の風力発電の開発ポテンシャルが米国の2倍、ドイツの9倍もあるのだから、風力発電にもっと取り組むべきだ」───昨日(2/14)、「エネルギー効率の向上と再生可能エネルギーへの転換」(主催:地球環境戦略研究機関)と題して東京で講演した、米国のロッキー・マウンテン研究所(Rocky Mountain Institute)のエイモリ・ロビンス会長は日本の風力開発にハッパをかけました。
著書「新しい火の創造」を手にするエイモリ・ロビンスさん。なんと、クリントン元大統領とオックスフォード大学で同級生だったそうです(写真:家入龍太) |
日本風力発電協会は2050年に2008年の電力需要の10%に相当する5000万kWを風力発電で供給するビジョンを掲げています。これを達成していくためには、風力発電に適した陸上・海上の場所を発掘していく必要があります。
そこで大林組は、風力発電に適した場所を探す技術の開発に着手しました。山間部など複雑な地形を3Dモデル化し、その中を吹いてくる風の流れを数値流体解析(CFD)でシミュレーションすることにより、風力発電の適地を
ナ、ナ、ナ、ナント、
ピンポイントで発掘
することができるのです。
複雑地形における乱れの影響の分布イメージ(西南西の風)(写真・資料:大林組。以下同じ) |
これまで、風力発電の検討では想定した地形の年平均や月平均の風速を主に予測し、立地の評価を行ってきました。
しかし、今後、風力発電施設の立地が見込まれる山間部などでは、複雑な地形によって風が乱れ、発電効率が低下したり、風車に故障が発生したりと、事業性を損なう可能性もあります。
大林組はこうした複雑な地形で、平均風速だけでなく風の乱れも予測できる風況予測解析手法を2014年3月を目標に開発することになりました。
風力発電に影響を与える大きな渦の動きを直接的に計算するので、複雑な地形による風の乱れ分布状況を解析することができます。風の乱れが大きい場所を避けて風車を最適に配置することで、安定した発電事業が可能になるわけです。
谷や尾根が複雑に混在する地形を流れる風を解析した例。平均風速が大きくても渦が発生しやすく、風力発電には向いていないことが分かる |
乱れを直接的に計算するLES手法により、乱れのリスクの高い地点をピンポイントで発掘できる |
渦には大小様々なものがありますが、すべてをCFDで解析していたのでは非常に長い計算時間がかかってしまいます。そこで、大林組は
大きな渦だけを直接計算
し、小さな渦はモデル化するLES(ラージ・エディ・シミュレーション)という手法を使っています。
解析によって風力発電の適地をあらかじめ予測することで、建設に向けた風況観測の観測点を従来より減らせるのでコストダウンにつながるというメリットもあります。
このほか、大林組は複雑な地形に吹く風の特性をより詳細に把握するため、青森県上北郡にある社有地と国有林に観測タワーを1基ずつ設置し、風況データの収集も始めました。
国有林内に設置された観測タワー |
世界的に見ても、日本は風力資源に恵まれています。このメリットを最大限に生かして、日本を“風力発電大国”にしていきたいですね。