管理人のイエイリです。
ル・コルビュジエといえば、フランク・ロイド・ライトやミース・ファン・デル・ローエとともに「近代建築の三大巨匠」の一人です。
当然、設計にはコンピューターは使っておらず、様々な名作は手描きの図面で生み出されていきました。
東京大学や慶應義塾大学などの大学院生有志で結成された「環境工学×建築デザイン研究会(略称:DIEP)」は、コルビュジエが設計した世界各地の住宅に着目。建築のかたちと風環境・温熱環境の関係について研究し、その成果が「ル・コルビュジエの住宅と風のかたち」(新建築2013年4月臨時増刊。定価800円)として出版されました。
「ル・コルビュジエの住宅と風のかたち」(新建築2013年4月臨時増刊)(写真:家入龍太) |
超アナログな手法で設計されたコルビュジエの住宅の風環境や温熱環境を解析するのに使ったツールは、
ナ、ナ、ナ、ナント、
CFD(熱流体解析)
ソフト、「FlowDesigner」(アドバンスドナレッジ研究所)なのです。
「レ・マットの住宅」(フランス)、「両親の家」(スイス)、「サラバイ邸」(インド)、「クルチェット邸」(アルゼンチン)など、世界各地の9つの住宅をそれぞれ3Dでモデル化。各地の卓越風を入力し、CFDによって各部屋の風の流れや風速を解析したものです。
さらに、通風性や風速などを改善するために、窓の開口度や家具の位置、部屋の用途などを変更してCFD解析を再度行い、どうしたら改善できるかを検討し、最適案までの試行錯誤の過程をまとめています。
住宅を3Dモデル化 |
卓越風などで通風性や風速を解析 |
通風性改善の試行錯誤の過程 |
最適な改善案についての考察 |
そして、最後は類似の住宅や建物を
東京で建てた場合
を想定して、樹木や家具の配置などにより風環境を改善する方法を考察しています。
東京のほぼ同じ規模、立地条件の建物に応用し、風環境を改善 |
CFDはBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)による建物の設計にも最近、よく使われています。一方、コルビュジエの時代は、頭の中で通風性や温熱環境を創造しながら設計に落とし込んでいったのでしょう。
アナログ全盛時代の設計を、最新のデジタルツールで検証するのは画期的な試みです。どんな結果だったのかを知りたい方は、ぜひ本書をご一読くださいね。