3Dで空調・照明を制御!BIMとBEMSが連携した「3DBEMS」
2013年7月30日

管理人のイエイリです。

先日(7/12)、当コーナーでBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)とBEMS(ビル用エネルギー管理システム)を初めて連携させた節電システムを大塚商会が発売したという記事をご紹介しました。

その実物が、昨日(7/29)、東京・飯田橋の大塚商会本社で行われた「『見える化』を進化させた省エネ対策セミナー」で公開され、多くの建設関係者が参加しました。

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大塚商会で開催されたセミナー「『見える化』を進化させた省エネ対策セミナー」には多くの建設関係者が集まった(写真:家入龍太。以下同じ)

竹中工務店では自社の技術研究所や関連会社のTAKイーヴァック新砂本社ビルなどで、BEMSと連携した「タスク&アンビエント照明」やセンサーと連動した「パーソナル空調」など、先進的な空調システムを導入し、消費電力を40%削減するといった目標に向けて取り組んでいます。

ゆくゆくは、建物自体でエネルギーをまかなう「ネットゼロエネルギービル(ZEB)」を実現することが目標です。

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{「最先端のICTと建築技術の融合によるスマートエネルギーマネジメント」と題して講演する竹中工務店環境エンジニアリング本部スマートコミュニティー推進グループの茂手木直也さん

空調・照明をきめ細かく制御し、エネルギー消費を減らすためのポイントは、

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

BIMモデルをコントローラー

 

として、使っていることなのです。

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3Dモデル上の照明をクリックすると対応する実物の照明もオン/オフされる

自分のフロアでも、壁に設置された多くの照明スイッチのうち、どれが自分の席周辺のものなのかはなかなか分かりません。その結果、必要な照明は一部だけなのに全部のスイッチを入れて、フロア全体の照明をつける、といった電力の無駄づかいはよく見かけます。

そこで、BIMモデルの内部に照明のスイッチを組み込み、該当する位置の照明器具をクリックすると、その部分の照明がオンになる、というシステムが開発されたのです。こうすると、必要な部分だけ照明をつける、ということが簡単に行えますね。

大塚商会本社では、展示ブースのあちこちに照明機器を取り付け、それをオフィスに見立てたBIMモデルを作り、その上に照明のスイッチや電源のオン/オフ状態などの画面を表示させ、モデルと実物が連動して動く様子をデモしました。

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オフィスに見立てた展示ブースには様々な照明が取り付けられている

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展示ブースのBIMモデル。照明をオン/オフさせるスイッチが仕込まれており、クリックすると実物と同じように点灯、消灯する
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BIMモデルと連動して点灯、消灯する実物の照明

従来のスイッチと違い、重要なのは

 

レスポンスの速さ

 

だそうです。

画面上のスイッチをクリックしてから、実際に点灯、消灯するまで5秒もかかるとユーザーはイライラします。そこで、画面を操作すると間髪入れずに実物も反応するようになっています。

BIMとBEMSを連動させたこの技術は「3DBEMS」といい、Tスポットが竹中工務店の技術を元に開発しました。3D画面はBIMモデルから「FBX」形式とテクスチャーを取り出し、これを「Unity3D」というユーザーインターフェースによって制御します。

このシステムでは、コンセントにつながれている機器ごとに無線で消費電力を計測したり、オン/オフ制御したりできる大塚商会のスマートコンセントシステムが使われています。

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大塚商会のスマートコンセントシステム

BIMとBEMSが日本で初めて連携したと聞いて、セミナーに駆けつけた人も多かったのではないでしょうか。そして、BIMモデルの主な役割がスイッチや電力表示などの「コントローラー」ということについて、なぜBIMが必要なのかと、疑問に思った人がいたかもしれません。

しかし、スイッチや電力表示は建物のユーザーが最もよく使う機能です。ここにBIMモデルを持ってくることにより、次は「水道の使用量を見てみたい」とか、「火災報知器の稼働状態も見てみたい」、そしてついには「壁の裏にあるファンの稼働状態も見てみたい」と、ユーザーの要望は広がっていくでしょう。

3DBEMSの強みは、その要望に応じて次々とシステムを拡張していけることです。BIMの維持管理への活用というと、建築関係者はどうしても「壁の裏にある設備を管理する」などの方から入っていきがちですが、この3DBEMSは逆に壁の表側の管理から入り、裏へと進んでいこうという戦略があります。

ユーザーの興味やニーズをうまくとらえたBIMの運用やFM(維持管理)への導入戦略として、感心しました。

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