日影解析、視点移動も!建築家出身の画家が魅せた”脳内BIM力”
2013年7月24日

管理人のイエイリです。

「15分で描く」即描スケッチの第一人者、山田雅夫氏から、東京・銀座で個展を開くとの案内をいただきました。

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東京・銀座の個展会場で来場者を出迎える山田雅夫氏(写真:家入龍太。以下、同じ)

個展の会場に飾られた作品は、国内外の街並みを線画を基調とした水彩スケッチがメーンです。山田氏の何気ない説明を聞いているうち、最新建築設計技術との共通点があることに気がつきました。

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作品の随所に、

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

“脳内BIMシステム”

 

が生かされていることです。

例えば、「天空の街-フランス」と題した作品は、街を鳥瞰図的に見下ろした構図ですが、実際にはこの角度から見える視点場はないそうです。そこで山田氏は地上で観察した建物を“脳内3Dモデル化”し、視点を上空に移してこの作品を描いたそうです。

さらに街の周囲は雲で覆われていますが、現地を訪れた時は晴天で、“脳内気象シミュレーション”によって創作したそうです。

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「天空の街-フランス」(部分)は街を上空から見下ろしたような構図だが、現場にはこのような視点場はなく、“脳内3Dモデル”から想像して描いた

「瓦屋根の重なりと八坂の塔-京都」という作品では、五重塔という構造物を成立させるために不可欠な「尾垂木(おだるき)」や頂上部にある「相輪」は細部を省略することなく、はっきりと描かれています。

一般の画家なら目立たない部分は省略してしまいがちですが、建築家のこだわりを感じますね。“脳内構造BIMモデル”が作品にリアリティーを与えています。

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「瓦屋根の重なりと八坂の塔-京都」(部分)で省略されずに描かれた構造部材

また、「岩山と一体化した集落-南フランス」という作品では、斜面に林立する建物に落ちた影が美しいコントラストをかもし出していますが、これも脳内で

 

日影シミュレーション

 

を行って、最も影が美しい太陽高度や角度を頭の中で設定し、影はパースのように描いたそうです。

 

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「岩山と一体化した集落-南フランス」(部分)で最適な太陽の位置から割り出した影がつけられている

今は複数のスケッチ教室で十数クラスを受け持つ売れっ子講師として多忙を極める山田氏ですが、もともとは東大工学部都市工学科卒で“IT派”の都市設計家でした。

例えば1990年代に、京都・龍安寺の石庭を川の流れに見立て、当時、数千万円もしたコンピューターを使って流体解析(CFD)を行い、発生した渦の模様を石庭のデザインに生かす、といったことに先駆的に取り組んでいたのです。

もし、そのころBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)があれば、真っ先に飛びついて第一人者になっていたに違いありません。

個展は7月22日(月)から27日(土)まで東京・銀座の光画廊で開催しています。建築家らしい山田氏の作品にご興味のある方は、今週いっぱいまでですのでこの機会にどうぞ!

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山田氏が出版したスケッチ入門書の一部。今は売れっ子講師として多忙を極める
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個展は東京・銀座の「光画廊」で7月27日(土)まで開催中

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