2D図面から3Dモデルを作る!CIMの設計プロセスがBIMと違う理由
2013年8月21日

管理人のイエイリです。

建築分野のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)による設計は、まず建物の3Dモデルを作った後、2Dの図面を作成する、というのが一般的な流れです。

それに対し、土木分野のCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)で橋梁などを設計する場合、

 

2Dの図面が先

 

にできてしまい、それから3Dモデルを作るという流れの方が自然かもしれません。

こう指摘するのは国土交通省国土技術政策総合研究所(国総研) 高度情報化研究センター情報基盤研究室の主任研究官、青山憲明さんです。

20130821-image3.jpg 20130821-image4.jpg

茨城県つくば市にある国総研の建物(左)と国土技術政策総合研究所高度情報化研究センター情報基盤研究室の青山憲明主任研究官(左)(写真:家入龍太)

2Dの図面から3DのCIMモデルを作るというと、ちょっと順序が違うんじゃないの?と思ってしまいがちですが、話を聞くと青山さんの話は説得力がありました。

一般的に橋梁はスパンや荷重がケース・バイ・ケースで大きく異なり、その条件によって桁橋やラーメン橋、トラス橋、アーチ橋など外形は大きく変わります。そして荷重を合理的に支えるための部材の断面を構造計算によって決めるというところから作業がスタートします。

こうした作業の結果、橋桁や橋脚の断面や寸法が決まっていき、これらの諸元や仕様を定義する時点で既に図面が出来上がってしまうというわけです。

また、橋梁は建築物に比べて一見、単純に見えますが、直線からカーブに移行する区間では平面線形がクルマのハンドルを一定の速さで回したときに描く「クロソイド曲線」になっていたり、横断面もカーブの曲率にあわせて外側が高くなる「カント」が付いていたりと、微妙に複雑な曲線、曲面の連続体といっても過言ではありません。

これと似たようなケースは建築物でもあります。例えば、ある立体倉庫の場合、クルマが出入りするらせん状のアプローチ通路は、縦断方向、横断方向にも勾配が付いており、床が平らな建物本体との取り付け部分も複雑な面になっています。

こうした構造物のBIMモデルはそう簡単には作れません。そこでこのアプローチ通路については、まず2Dで形を定義してから“BIMの達人”に3Dモデル化してもらうというような設計プロセスがとられました。

橋梁の場合、あちこちでこれと同じようなケースが出てくるので、「まず2Dで図面化し、それから3Dモデル化」という手順が必要なのかもしれませんね。

20130821-image1.jpg

曲線区間の橋桁のCIMモデル。外観は一見、シンプルだが複雑な曲線、曲面の連続体だ(以下、2点の資料:国土技術政策総合研究所高度情報化研究センター情報基盤研究室)

20130821-image2.jpg
橋台のCIMモデル

このほか、土木構造物の工種には山岳トンネルやシールドトンネルのほか土工、擁壁、基礎などがあり、用途も道路のほか河川、鉄道、上下水道など様々です。それぞれ、荷重を支えるメカニズムが異なり、求められる機能が違います。

それぞれの土木構造物に対して、

 

最適な設計プロセス

 

を考え、その結果を統合していく方法も、土木分野のCIM活用の大きな課題といえそうです。

青山さんは「CIMの今後の課題、研究の方向性」と題した3枚のメモを渡してくれました。その中には技術的課題、制度的課題、研究の方向性についての課題がびっしりと書き込まれていました。「3D→2D」か「2D→3D」か、というのはその1つにすぎません。

CIMにはBIMとは違ったチャレンジの数々が待ち受けているようです。しかし、これらの課題を解決していくうちに、土木の設計・施工プロセスは大いに進化していきそうで、楽しみです。

(Visited 3 times, 1 visits today)

Translate »