管理人のイエイリです。
ビルの賃料や水道光熱費などは、企業を維持していく上で必要な最低限での支出、つまり「固定費」と考えられがちです。
「ところが、FM(ファシリティー・マネジメント)システムの活用が進んでいる欧州では、この固定費を利益に変えている企業がたくさんある」と語るのは、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の建物データを使ったFM用システム「archiFM」や「archifm.net」などを開発・販売するハンガリー・ヴィントコン(vintoCON)社のアンドラス・シゲッティ(Andras SZIGETI)さんです。
来日したハンガリー・ヴィントコン社のアンドラス・シゲッティさん(右端)と多田真理子さん(中央)。左端は日本代理店、シェルパの高松稔一代表取締役(写真:家入龍太) |
建物のBIMモデル(上)と連携するarchifm.net(下)(資料:シェルパ。以下同じ) |
アンドラスさんによると、自社が保有または賃貸しているオフィスをarchiFMで分析し、必要度に応じて売却や賃貸の中止、もしくはエネルギー改修などの投資といった判断を行ったところ
ナ、ナ、ナ、ナント、
20%のコスト削減
を実現した会社もあるのだそうです。
「archiFMやarchifm.netで管理する対象物は、オフィス家具や備品などから、建物内部の配管設備まで、企業によって幅広い。例えば人工透析を行う医療機関では、常に正常な動作が求められる空調機器などの管理にも使っている」とアンドラスさんは語ります。
FMのシステムにデータをインプットして現状を管理することも重要ですが、さらに利益を生むのは解析を行って無駄を見える化し、改善していくことが、固定費を利益に変えるコツのようです。
「archiFMなどは企業経営用の基幹システム、ERPやビルエネルギー管理システム、BEMSのデータとも連携し、管理できる」(アンドラスさん)とのことです。つまりこれまで「固定費」というブラックボックスになっていた建物の管理費や水道光熱費を「見える化」し、建物運用段階でのコスト構造を改善していくことに経営者がかかわれるようになるわけですね。
自社で使っている建物や設備のコストを見える化して解析することにより、突出した部分や無駄な部分を見つけて対処するのがFMシステムで利益を生むコツ |
定期メンテナンスのコスト計画表 |
欧米の銀行や官庁、メーカーなどではこうした例はいくつも転がっているようですが、日本ではあまりFMで儲けたという話は表に出てきません。
そこで、archifm.netの日本代理店であるシェルパの高松稔一代表取締役は「この秋にも日本でしっかりとしたFMのシステムを立ち上げ、実績を作りたい」と決意を語っています。
いよいよ、日本でもコストを利益に変える
攻めのFM時代
が到来するかもしれませんね。
建物のライフサイクルコストのうち、竣工までのコストは2~3割にすぎず、残りの7~8割は完成後の運用段階で発生するコストと言われています。建設業もFMのシステムを駆使し、運用段階のコスト削減を図るサービスにかかわることによって、チャリンチャリンと「日銭」が入ってくる安定したビジネスを展開できるかもしれませんよ。
(訂正)
初出時に「archiFMが人工透析機器の管理に使われている」旨の記述がありましたが、「空調機器などに使われている」の誤りでした。訂正します。