管理人のイエイリです。
スペインのバルセロナで建設中の巨大教会、「サグラダ・ファミリア」は、1882年に建設が始まりました。直線、直角、水平がほとんどない外観には、数多くの彫刻が網羅され、建物と一体化されています。
BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)も、CNC(コンピューター数値制御)の工作機械もなかった19世紀から、よくぞこのような複雑な建物を造ってきたものだと、巨匠・アントニー・ガウディをはじめ、建設プロジェクト関係者には敬意を払いたい気持ちになります。
また、日本人もこのプロジェクトに深くかかわっており、正面の「生誕のファサード」には、1978年からこの現場で働く彫刻家の外尾悦郎さんが制作した15体の天使像もあります。
以前は数本の塔があるだけでしたが最近、急ピッチで建設が進み、教会の内部空間ができた2010からは公開された礼拝所になりました。その内部を見てビックリ。
ナ、ナ、ナ、ナント、
樹木のような柱
がニョキニョキと立ち上がっているではありませんか。
柱は途中から球面の接合部材を介して、上方向に広がっています。しかも柱の断面は連続的に変わっています。
材料は石材が主なので、部材に引っ張り応力が作用することは避けなければいけません。コンピューターもない19世紀の時代によくぞこのような設計ができたと感心しました。
実はFEM(有限要素法)などで数値解析する代わりに、「逆さ吊り実験」を行って柱の形状などを求めていたのです。ワイヤを構造体に見立てて上下に180°ひっくり返した模型を作り、柱の先にはその上からかかる荷重に相当する重りをぶら下げます。
するとワイヤの建物には引っ張り力だけがかかる形で安定します。この形を地上の建物で再現すると、柱などには曲げモーメントが発生せず、部材には圧縮力だけが作用するように設計できます。
このように、サグラダ・ファミリアはワイヤモデルによる逆さ吊り実験で部材の結節点座標を求める「3D構造解析」を行った後、大きいスケールの模型を作り、それから現場での施工を行うという手間ひまのかかる工程で建設されていたのです。
地下の博物館には大小様々な膨大な数の模型が展示されており、まさに“模型の殿堂”という感じでした。
模型作りは現在も行われています。地下にある工房では、
ナ、ナ、ナ、ナント、
3Dプリンター
が設置されていました。
最近は3DCADによる設計やコンピューターによる構造解析を行っているため、設計や模型の製作もスピーディーになり、工期の短縮に貢献しているようです。
また、3Dプリンターで作ったと思われる模型は、裏側の「受難のファサード」側にガラスケースに入れて展示されていました。既に完成している部分は茶色で、これから作る部分は白色で色を分けて造形されていました。
現在の塔でも相当高いですが、今後、作られる中央の塔はさらに巨大なものになることが分かります。
サグラダ・ファミリアは、今から10年後の2026年に完成予定です。そのときは現在の建物のイメージはさらに大きく変わっているでしょうね。数多くの観光客を受け入れながら、安全に着々と工事を進めていくプロジェクト関係者には頭が下がります。