山岳トンネル工事では、湧水のある地質を事前に予測し、対策を行っておく「フロントローディング」が、生産性を高めるための大きな切り札になります。
そこで鹿島は、大阪府内で施工中の箕面トンネル西工事で、本坑の掘削に先だって700mの超長尺ボーリングを行い、切羽前方の湧水区間の状況を正確に予測することに成功しました。
その方法とは、
ナ、ナ、ナ、ナント、
ボーリング先端に水圧計
を仕込み、ボーリングしながら掘削最前線の湧水圧を連続測定することだったのです。
この水圧計には電源が内蔵されています。
また、ボーリング孔から戻ってきた水の量を電磁流量計(口元湧水量計)で測ることにより、湧水量も自動的に連続計測できるようにしました。
つまり、切羽前方にある湧水区間の湧水圧と湧水量を連続的に計測することで、湧水区間の状況を正確に予測し、本掘削の前に適切な湧水対策を行えるようになったわけです。
これぞ、“フロントボーリング”によるフロントローディングと言えそうですね。
このシステムは「スイリモリサーチ・モニター」(スイリモ)と呼ばれ、特許出願中です。
これまでは、湧水圧を測定するためにボーリングロッドをいったん引き抜いて、ボーリング孔の区間ごとに水圧を計測する「パッカーシステム」という管を挿入する必要があり、大変な手間がかかっていました。また、湧水量も区間ごとに把握することが困難でした。
今回の工事でスイリモにより計測された湧水圧と湧水量は実際の地質や水理状況とよく合致していたそうです。
今後も
1000m級の超長尺
ボーリングが今後も予定されており、引き続き検証を行います。
建設業の労働生産性が長期低落傾向であるとよく指摘されていますが、山岳トンネル工事については「技能労働者の生産性はこの50年間で10倍に上がっている」(11月24日の会見で石井啓一国土交通大臣が発言)とのことです。
岩盤や地盤の中の見える化こそが、土木の生産性向上の要と言えそうですね。