無人化施工も視野に!鹿島が導入した“山を読む”トンネル削孔機
2016年6月13日

管理人のイエイリです。

建設業の労働生産性が長期低迷を続けるなか、山岳トンネル工事の分野は例外的に生産性がグングン伸び続けています。

国土交通省の資料(PDF)によると、昭和30年代の東海道新幹線のトンネル工事では1m掘り進むのに58人工(にんく)かかっていたのが、2010年の新幹線工事ではわずか6人工に減りました。生産性は約10倍に伸びたことになりますね。

山岳トンネル工事の生産性に大きな影響を及ぼすのが、トンネル最先端の「切り羽」と呼ばれる部分に、発破用の爆薬を装薬するための孔を掘る削孔作業です。

鹿島は岩手県で施工中の「新区界(しんくざかい)トンネル」(全長4998m)の現場で、削孔作業に日本初となる4ブームフルオートコンピュータージャンボを投入し、さらに生産性を高めることに成功しました。

鹿島が新区界トンネル工事に投入した4ブームフルオートジャンボ(以下の資料、写真:鹿島)

鹿島が新区界トンネル工事に投入した4ブームフルオートジャンボ(以下の資料、写真:鹿島)

削孔作業にはこれまで4人かかっていましたが、1人で作業できるようになり、かつ削孔時間も従来の2分の1以下になったため、

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

削孔作業の生産性が8倍

 

以上に上がったのです。

これまでは、ドリルを備えたブーム1本当たり1人の作業員がついて、機械と切り羽の位置を照合しながら削孔の位置合わせを行っていました。

ところがこの新型機では、4本のブームを1人の専任オペレーターが操作できるようになったのです。

従来の掘削機(左)と新型機の(右)による作業の違い

従来の掘削機(左)と新型機の(右)による作業の違い

そして新型機では削孔速度が最大で2倍となり、地山の硬さに応じて自動的に最適な削孔作業に調整されるため、閉塞(へいそく)トラブルが起こりません。

削孔の角度や長さも、コンピューターで自動制御されるので、余掘りも40%低減されるそうです。

従来機の余掘り

従来機の余掘り

新型機は余掘りも40%削減できた

新型機は余掘りも40%削減できた

さらに、この新型機がスゴいのは、自動収集された削孔データから、切り羽前方の

 

地山を読んで

 

削孔パターンを修正し、適正な削孔順序を決めることができることです。

下の図を見ると、硬いところは密に、柔らかいところは疎に、といった削孔パターンになっていることがわかります。

削孔データから切り羽前方の地質の硬軟度を読んで決定された削孔パターン

削孔データから切り羽前方の地質の硬軟度を読んで決定された削孔パターン

施工中のデータを使って前方地山の地質状況を予測・評価できるほか、トンネルを内側から支える支保工の適切な強度(支保パターン)を選定できます。

また、切り羽面の補強が必要かといった、切り羽の安定性も判断できます。

鹿島は今後も人工知能を使った発破パターンの自動修正なども活用し、山岳トンネルのICT施工や無人化施工の実現も見据えた技術開発を進めていくそうです。

これまで大幅に向上してきた山岳トンネルの労働生産性が、ICTとの融合でさらに今後も高まっていくというのは素晴らしいですね。

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