管理人のイエイリです。
建設業はもちろん、製造業などでも実世界を3Dモデルで再現したデジタルコンテンツの開発が増えています。
これまで製造業では、レーザーレンジスキャナーや光学式3次元計測器などの装置が使われてきましたが、ネックになっていたのは装置が高価で、計測時の準備に手間がかかることでした。
そこで凸版印刷は、東北大学大学院情報科学研究科 青木孝文研究室が開発した「位相限定相関法」という手法を用いて、一般のデジタルカメラで撮影した写真から3次元モデルを自動作成できる画像処理技術を開発しています。(当ブログ2014年6月19日の記事参照)
前回の記事から3年を過ぎた今、この技術はさらに進化を遂げていました。このほど、本田技術研究所の協力を得て、自動車ドアのクレイモデルを3Dモデル化したところ、
ナ、ナ、ナ、ナント、
A4サイズで誤差0.08mm
という、CADでの使用に耐えるレベルの高精度を実現しきたのです。
自動車ドアのスピーカー周辺を、A4サイズ大の範囲で、約60cm離れた距離から民生用のコンパクトデジタルカメラ(2020万画素、焦点距離35mm。35mm換算)を使って9枚の写真を撮りました。
このデータを約30分かけて3Dモデル化したものを、工業用3次元計測器の測定結果と比較したところ、二乗平均平方根誤差(RMSE)が0.08mmとなりました。
下の画像は誤差の大きさを色分け表示したものですが、
誤差±0.03mm以下
を意味する緑色の領域が多いことがわかります。
また、3Dモデルの滑らかさを確認するためにモデリング分野で使われている「ゼブラパターン」を投影したところ、明確なしま模様が表示され、十分、滑らかであることがわかりました。
高精度を実現したポイントは、多数の写真から3Dモデルを作成する過程で、対象物上の対応点を最適化する技術と、複数の視点から推定した対応点を統合する技術を改良したことにありました。
凸版印刷はこの技術を自動車デザイン業界向けの3次元計測システムとして、2017年度中のサービス開始を目指して開発を進めています。
建築や土木の分野は、製造業とスケールこそ違いますが、安価なデジカメで鋼構造物やコンクリート構造物の高精度な3Dモデルを作るのに生かせる技術かもしれませんね。