管理人のイエイリです。
これまで、建物内の静けさを確保するための遮音設計は、建築設計者が部屋のレイアウトを行った後、音響技術者がその図面を見ながら壁や床に求められる遮音性能を設定するのが一般的でした。
しかし、2次元図面を使って検討すると、上下間に複雑な吹き抜け空間があったりした場合、思わぬ見落としが発生してしまうこともあります。
そこで竹中工務店は、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を活用し、
ナ、ナ、ナ、ナント、
建築設計者が遮音設計
を行える「BIM音響設計ツール」を開発したのです。(竹中工務店のプレスリリースはこちら)
この音響設計ツールは竹中工務店の音響設計グループとBIM建築設計グループが協業して開発したもので、大阪府吹田市で建設中の国立循環器病研究センターの設計に初適用されました。
各部屋のBIMモデルの属性情報に、必要とする静けさを表す「室内騒音目標レベル」や、発生音の大きさを表す「発生音レベル」といった音響特性を入力します。
この部屋モデルを使って、建築設計者が部屋のレイアウトを行うと、BIMモデル上に音響グレード別に色分けされ、隣室間や上下間の壁や床に求められる遮音性能を自動計算してくれるというわけです。
建築設計者が部屋のレイアウトを決める段階で、大きな音が発生する空調機械室が静けさが求められる役員室の隣にある、といった音響リスクが一目瞭然でわかります。
そのため、初期の設計段階から遮音上、有利なレイアウト案を作るという“遮音設計のフロントローディング(業務の前倒し)”が可能となり、効率的な設計が行えます。
建築設計者の作業段階で、音響リスクがわかるので、遮音上有利なレイアウト案を作れる●
さらに、このツールが進んでいるのは、各遮音性能に対応した壁ごとにコスト情報も入力されていることです。そのため、部屋をレイアウトするのと同時に
遮音コストも自動算出
し、リアルタイムにコスト比較が行えるのです。
同社では既に、AI(人工知能)を使って部屋のレイアウトと遮音性能だけでなく、構造、設備、建設コストなどを統合した最適解が自動設定するシステムの開発にも着手しているとのことです。
BIMによる設計はこれまで、部屋や壁、窓などを一つ一つ、マウスで配置していく手作業が主流でしたが、いよいよAIなどを使った設計の自動化に向かって進化していく流れになってきたようです。