管理人のイエイリです。
モルタル状の材料を薄い層で積み上げながら、建物や橋などを作る建設用3Dプリンターは、ここ数年で急速に実用化されてきました。
そして、3Dプリンターを使ったプロジェクトやソフト・ハード技術、材料などに関する学術的な論文も数多く発表されています。
そこで、米国カリフォルニア大学アーパイン校(University of California Irvine)の大学院生、アンドリュー・トゥロン(Andrew Truong)さんは、
ナ、ナ、ナ、ナント、
3Dプリンターの歴史や技術
を集大成した修士論文「建設分野での3Dプリンター技術活用における技術動向」(State-of-the-Art Review on 3D Printing Technology Applications in Construction)をまとめたのです。
日本と3Dプリンター技術は密接に関係があります。というのは、世界初の特許を申請したのは名古屋市工業研究所の小玉秀男博士だったのです。残念ながら仮特許出願の期限が1年で切れたため、商業用の特許には至らなかったということが冒頭で紹介されています。
草創期の話としては、論文に残る最初の建設用3Dプリンターは、2003年に南カリフォルニア大学のベロック・コシュネビス(Berok Khoshnevis)教授が開発した「コンター・クラフティング(Contour
Crafting)」でした。また、2008年には英国のラフバラ大学(Loughborough University)が3Dプリンターでベンチを造形しました。
その後、2010年代の後半に入ると、続々と建設用3Dプリンターが開発されていきます。例えば、中国のウィンサン(WinSun)社は、24時間で10棟もの住宅を建設しました。
2017年には米国のエクストリー(XtreeE)社が、2台のロボットアームを連動させて、木製の窓枠を3Dプリンターによる造形中に埋め込むことに成功しました。
そして2018年には、米国のアイコン・ビルド(ICON Build)社が米国の建築基準で認められた初の住宅を3Dプリンターで建設したのです。
修士論文らしいのは、材料の種類や強度特性、造形時の挙動など技術的なデータも豊富に掲載していることです。例えば、オランダの基準に合致してアイントホーヘン(Eindhoven)大学などが造ったコンクリート橋では、縮小した模型で載荷試験を行い、荷重と変形のデータを取った例が紹介されています。
このほか、米国のNASA(航空宇宙局)が行った火星での3Dプリンター活用コンペについて、応募策の詳細な内容や、商業的に成功している3Dプリンターの例などもまとめられています。
驚くべきことに、3Dプリンターの活用例にとどまらず、
3Dプリンターの設計・製作
に関する内容もまとめられているのです。
例えば、3Dプリンターによる造形のワークフローや、超小型コンピューター「Arduino」のファームウエア改造、3Dモデリングソフト「Google SketchUp」による造形データの作成といった実践的な内容です。
論文の最後には、112編もの参考文献が紹介されています。全86ページにわたるこの修士論文は、もちろん英語で書かれていますが、建設用3Dプリンターの歴史や現在の技術動向をサクッと知るのに最適な資料と言っても過言ではありません。ご興味のある方は、こちらから全文を無料でダウンロードできますので、ご覧ください。