管理人のイエイリです。
地下室などの工事を行うとき、鋼矢板などで仮設の土留め壁を設けて、中を掘り下げていきます。
そのとき、土留め壁が倒れないよう、突っ張り棒のような役目を果たしているのが「切り梁(きりばり)」です。
切り梁には大きな圧縮力が働くので壊れないように、入念な安全管理が求められます。
そのため工事中は、定期的な目視確認や測量によって、土留め壁に異常な変形がないかを確認していますが、手間ひまがかかるうえ危険もありました。
この作業を省力化するため、丸紅、CACH(カック。本社:東京都品川区)、丸紅建材リースの3社は、切り梁の軸力を手軽に確認できる「IoTによる切り梁異常検知・自動通知システム」の評価版の提供を共同で開始しました。
切り梁の部材には工場出荷時点で、IoT(モノのインターネット)デバイスの設置が完了しており、
ナ、ナ、ナ、ナント、
現場で組み立てるだけ
で、スマホやタブレットでリアルタイムに軸力がわかるのです。
IoTデバイスには、CACHが開発した異常検知システム「ST-COMM」が使われています。
ST-COMMとは、ひずみセンサーや温度センサーなどの情報を、「Sigfox」というLPWA(Low Power Wide Area)通信ネットワークを通じてクラウドサーバーに送り、その情報をスマホやタブレットなどでどこでも見られるようにしてIoT化を実現するシステムです。
Sigfoxの特長は低価格、低消費電力、長距離伝送であることです。そのためセンサーで計測したデータを送る通信装置に内蔵した乾電池は、何年も交換する必要はありません。
クラウドに送信されたデータは、インターネットを通じてどこからでもスマホやパソコンなどで見ることができ、異常値が発生した場合には、現場関係者に
アラートメールを自動送信
し、切り梁にかかる軸力のデータを確認し、迅速な対応を取ることも可能です。
3社は今回の評価版の提供を通じてユーザーからニーズを吸い上げて、CACHによるさらなる技術改良を行うとともに、丸紅建材リースによる重仮設鋼材の新たな機能創出、丸紅グループによる国内外への市場開拓を目指します。
土留めの鋼材は、IoTデバイスとの合体によって、新たな付加価値を生む製品に生まれ変わるわけですね。「重さのある世界」と「バーチャルなシステム」の融合によって、これからも画期的な製品が誕生しそうです。