管理人のイエイリです。
工事現場で行う検査はこれまで、現場に付せんなどを張って、それに対応する問題点などを野帳に記録して、事務所で検査結果としてまとめるというのが一般的でした。
エム・ソフト(本社:東京都台東区)が開発・販売する「Pinspect」というiPad/iPhone用アプリは、AR(拡張現実)技術を使って、デジタル付せん(ピン)を空間に張り付け、それにメモや写真などをひも付けることができます。
デジタル付せんなので風で飛んでなくなったりする心配がありません。(詳しくは、2020年4月7日の当ブログ記事を参照)
竹中工務店とエム・ソフトは、このPinspectをさらに効率的に活用できるようにしました。
Pinspectを
ナ、ナ、ナ、ナント、
設備用BIMソフト「Rebro」
と相互にデータ連携させる機能を共同開発したのです。(エム・ソフトのプレスリリースはこちら)
設備などのBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)モデル上に、検査すべきポイントを指定します。そのポイントには、BIMモデルの属性情報が入っています。
そのBIMモデルをPinspectの入ったiPadやiPhoneにインポート(読み込み)し、現場とBIMモデルを位置合わせすると、iPadやiPhoneの画面上に先ほど指定した検査ポイントが「空間ピン」として表示されます。
現場で検査すべき配管などの上に、空間ピンが重なって表示されるので、どこを検査するのかがとてもわかりやすいですね。
また、Pinspectには現場写真を撮影するために「電子小黒板」が表示されますが、その黒板に書く情報もBIMモデルの属性情報が自動的にセットされるので、二重入力のムダがありません。
あとは空間ピンに写真やコメントなどをひも付けて入力します。そのデータを再度、BIMモデルにインポートするとBIMモデルに現場情報を取り込めるというわけです。
竹中工務店は実際の現場でこのデータ連携機能を使い、「区間貫通処理管理」の業務がどれだけ効率化できるかを試しました。
これまでは、事務所で検査リストを作成し、現場では手書きのホワイトボードなどを使って数人がかりで写真撮影。現場事務所に戻ってからは写真帳を作成・印刷するという手間ひまのかかる作業でした。
それがARとBIMの連携機能を使うことにより、現場での写真撮影は1人だけでできるようになり、ARアプリのデータをBIMモデルにインポートし、帳票を自動作成できるようになったため、作業時間は
約70%も短縮
されたのです。
このBIM連携機能は、2021年4月にPinspectのオプション機能として発売されます。また、両社は今後も現場での各種施工管理に適用を拡大するほか、様々な機能を追加していく予定です。
現場でのARやMR(複合現実)の活用は、BIMなどの他システムとのデータ連携による自動化だけでなく、技術者の「目」の機能を向上させる“超人化効果”がもたらすスピードアップやヒューマンエラー防止の効果も期待できそうですね。