管理人のイエイリです。
建物や橋梁などの完成形状や寸法を確認する「出来形計測」では、公共座標系を使った3Dデータとして記録しておくと、なにかと便利です。
ただ、公共座標系による3D測量には、RTK-GNSSという高精度の衛星測量を行う必要があり、基地局の設置や高価な位置情報サービスの利用など、手間ひまやコストがかかっていました。
こうした問題を解決してくれるのが、福井コンピュータが2021年8月24日に発売した現場計測アプリ「FIELD-TERRACE」の最新版です。
高精度の計測に、ソフトバンクが提供する「ichimill」というサービスを利用できるようにした結果、
ナ、ナ、ナ、ナント、
月額3000円(税別)
で、全国どこでも、誤差数センチメートルの測量が可能になったのです。
ichimillは、ソフトバンクの携帯基地局に設けた独自基準点を利用した補正情報の提供サービスで、ソフトバンクの携帯ネットワーク上で提供されています。
そのため、同社の携帯が使えるエリアならどこでも使えるほか、広範囲に移動した場合でも基準点を切り替える「ハンドオーバー」という仕組みで、継続して高精度な測位が可能です。
FIELD-TERRACEは、トプコンの墨出し器「杭ナビ」や各種測量機器と連携しながら、測設(墨出し)や丁張り設置、出来形計測などを一人で行えるアプリです。
また、国土交通省が試行を始めている「3次元計測技術を用いた出来形管理要領(構造物工編)」で定められた、橋梁下部工の出来形計測方法にも対応できます。
ただし、ichimillは日本測量協会の認定サービスではないため、計測したデータは公共測量成果としては認定されません。
このほか、測量員が持つプリズム(ミラー)の位置で3Dモデルから任意の断面を表示し、型枠の設置を行ったり、任意の基準線から構造物の位置を墨出ししたりする機能なども追加されました。
さらに、発注者による現場立会検査をオンライン化する「遠隔臨場」用として福井コンピュータが提供するクラウドサービス「CIMPHONY Plus」との連携機能も強化され、構造物のCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)モデル上に、リアルタイムで
ミラーの位置を表示
できるようになったのです。
これまでの遠隔臨場では、遠隔地にいる発注者は、現場の映像や会話内容と図面を突き合わせながら、現在、測っている位置を推定していましたが、わかりにくいという問題もありました。
また、現場で計測した数値は、データとして「CIMPHONY Plus」に送信され、記録されるようになっています。
気になるFIELD-TERRACEの利用料金ですが、3D計測が可能なProfessional版は年間8万4000円(税別)です。
現場の出来形データが、手軽に公共座標系で得られるようになると、国交省の3D都市モデル「PLATEAU」や、静岡県の「Virtual Shizuoka」などのデータとも“公共座標マッシュアップ”という手段で一体化できるので、現場内から地球規模までデータの有効活用の道が開けてきそうですね。