管理人のイエイリです。
土工事で盛り土を振動ローラーで締め固める作業では、ローラーがその場所を通過した回数で品質管理を行う「工法規定」がよく用いられます。
これまではGNSS(全地球測位システム)を活用して振動ローラーの位置を計測し、運転席に搭載したタブレット端末のモニターに締め固め回数を色分け表示するシステムがよく使われてきました。
しかし、振動ローラーの運転中に、(1)モニターに目線を動かすために安全性に問題がある、(2)画面が小さいので細かな部分の踏み残しが見えづらい、などの課題もありました。
そこで三井住友建設は、これら2つの課題を同時に解決する「AR転圧管理システム」を開発しました。
AR(拡張現実)の技術を使って、盛り土の転圧回数の色別画像を、
ナ、ナ、ナ、ナント、
実際の盛り土に重ねて
表示できるのです。(三井住友建設のプレスリリースはこちら)
AR画像と運転手の視点を合わせる補正は、次の3つの方法で行います。
運転席に設置した2台のアイトラッキング(視点計測)カメラが運転手の目の動きを認識し、目線に合わせてAR画像の表示範囲や角度を補正します。
また、加速度センサーで車体の前後左右の傾きを自動認識し、AR画像の表示を補正します。
さらにGNSSの位置情報に加えて、車両前面に設置した360°カメラで車体の方位を自動認識し、AR画像の表示を補正します。
AR画像を現場で見るデバイスとしては、HoloLensのようなMR(複合現実)ゴーグルや、メガネ部分に小型スクリーンを仕込んだスマートグラス、タブレット端末などが使われていますが、このAR転圧管理システムでは、フロントガラスに
大型の透過型ディスプレー
を搭載しています。
透過型ディスプレーとは、映像を表示しつつ、向こう側が透けて見えるディスプレーのことで、最近では透過率80%以上と、ガラスに近い透過度を備えた製品もあるようです。
MRゴーグルなどは視界が狭くなることから、工事現場では安全管理上、使いにくい場合もありますが、透過型ディスプレーならそんな心配もいりません。
現場や建設機械でMRやARを使うときの新しいツールとして、今後、使われそうですね。