ギターの原理でアンカー張力測定! 応用地質らが簡単、安価、安全な点検技術を開発
2021年11月29日

管理人のイエイリです。

山間部の道路をドライブしていると、法面の崩壊を防ぐため「グラウンドアンカー」で固定された擁壁をよく見かけます。

法面崩壊を防ぐグラウンドアンカーの例(以下の写真、資料:応用地質)

アンカーという名前が付いているように、その反対側は「錨(いかり)」のように地山中に固定されており、法面上の擁壁をつなぐPC鋼線に緊張力をかけて、法面を支えています。

グラウンドアンカーの断面イメージ。地中のアンカー部と擁壁部をつなぐPC鋼線には緊張力が導入されている

グラウンドアンカーは時間と共に老朽化し、機能が低下していくおそれがあります。そこで定期的に

「リフトオフ試験」

によってPC鋼線を引っ張り、緊張力がどれだけ残っているかを点検していました。

グラウンドアンカーのPC鋼線を外側から引っ張って緊張力を測定する「リフトオフ試験」

しかし、この方法だと大がかりな設備が必要なうえ、1日当たりに試験可能なアンカー本数が4~6本と少なく、膨大な数のアンカーを点検するためには、費用と時間がかかることが大きな課題でした。

しかも、錆が著しいアンカーはリフトオフ試験中に破断して、ゴム鉄砲のように地表に飛び出す危険もありました。

そこで応用地質は、中日本高速道路のグループ会社である中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋(本社:名古屋市中区)、岐阜大学と共同で、簡単、安価、安全にグラウンドアンカーの緊張力を測定できる技術を開発しました。

この新しい技術は「VIBRES(ビブリス)」と呼ばれるもので、アンカーの先に小型のバイブレーターや加速度計を設置してPC鋼線の緊張力を求められるものです。

新しい緊張力測定技術「VIBRES」で使われる小型バイブレーターや加速度計

従来のように強力なパワーで引っ張らなくても張力が分かるのは、グラウンドアンカーを

ナ、ナ、ナ、ナント、

ギターの弦に見立てて

PC鋼線(テンドン)の共振周波数から、アンカーの張力を算定しているからなのです。(応用地質のプレスリリースはこちら

アンカー各部とギター各部の対応。ギターの調弦時に、ナットで弦の張力を変えて音の高さを調整するのと同じ原理で、固有振動数から張力を逆算する

計測の方法は、アンカー頭部のPC鋼材余長部に設置した小型バイブレーターで、時間と共に周波数が高くなる「スウィープ振動」を与えることにより、PC鋼線が共振するときの固有振動数を読み取り、弦の固有振動数と緊張力の関係式からアンカー緊張力を逆算します。

応用技術ではこの技術による緊張力測定の実績を積み重ねて精度を向上させると共に、トンネルや橋梁、地すべり対策工など様々な種類にグラウンドアンカーに適用できるよう、検証を進めていく予定です。

土木構造物を音で測るという方法は「VIBRES」という名前がイメージさせるように、エレガントな方法ですね。

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