管理人のイエイリです。
様々な社会インフラの老朽化が課題になっていますが、石油コンビナートにある石油タンクもその1つです。
例えば、横浜市磯子区にあるENEOSの根岸製油所には、石油の量によって上下する「浮き屋根」を備えたタンクが数十基もならんでおり、中には錆が目立つものもあります。
巨大な石油タンクの塗装など補修を行うのに問題となるのが高所作業です。通常は仮設足場を使いますが、コストが高く、工期も長くなるうえ、墜落事故などの危険も課題でした。
そこで、ENEOSとアイ・ロボティクス(本社:東京都渋谷区)は、足場を使わずにタンクの塗装などを行える外壁吸着ロボットを開発し、このほど根岸製油所で実証実験を行いました。
しかし、ロボットには壁面を“自走”するような動力装置は積まれていないようです。このロボットを支えているのは、
ナ、ナ、ナ、ナント、
大型ドローン
だったのです。(アイ・ロボティクスのプレスリリースはこちら)
ロボットなどの重量を支えるため、上空にドローンを静止させておき、搭載した電動ウインチで外壁吸着ロボットを吊り上げる仕組みです。
塗料を吹き付けるノズルは一定の速度で動かす必要があります。上空をフワフワ飛ぶドローンが、微動だにせず、上空で定点ホバリングするのは難しいのではないかと思う方もいらっしゃるでしょう。
その秘密は、ドローンの挙動と電動ウインチの巻き上げスピード、塗料の粘度などを
高度なすり合わせ技術
により、精密制御していたのです。
外壁吸着ロボットには、高圧洗浄機を取り付けることもでき、その実証実験も行われました。
この「ドローン壁面補修」技術は、アイ・ロボティクス、日本製鉄、日鉄テックスエンジが共同開発し、展開しています。(詳しくは、2021年11月16日付けの当ブログ記事を参照)
経済産業省の調べによると、国内には原油貯油タンクが500基以上あり、半製品や燃料油のタンクも含めるとその10倍以上になると言われています。
さらに、福島第一原子力発電所の処理水タンクや、海外のタンクに目を向けるとタンクのメンテナンス市場は非常に多そうです。
アイ・ロボティクスは今後もENEOSとともに、国内の製油所で実証実験を行い、世界に先駆けてタンク補修の機械化や遠隔化、自動化を進めていく方針です。