鹿島がドローンで緑化工事を自動評価! マルチスペクトルカメラを使用し、遠隔臨場も
2022年6月9日

管理人のイエイリです。

堤防拡幅や造成工事などの仕上げに行われる「法面緑化工事」の良しあしは、地表面に対して植生が占める面積の割合を「植被率」という指標で評価します。

その“合格ライン”は、一般的に70~80%以上とされています。

法面緑化工事の例。その評価は目視によっていたため課題も多かった(以下の写真、資料:鹿島)

法面緑化工事の例。その評価は目視によっていたため課題も多かった(以下の写真、資料:鹿島)

しかし、これまで植被率の判定は、検査員の目視で行っていたため、広範囲調査には多大な労力が必要で、評価も個人差によってばらつくという課題もありました。

また、発注者と施工者の間で、植被率の測定結果の認識にずれが生じやすく、思わぬ手戻り工事が発生することも珍しくありませんでした。

こうした問題を解決しようと、鹿島岩手大学東京農業大学と共同で、誰もが納得する評価手法を開発しました。

ドローン(無人機)に、

ナ、ナ、ナ、ナント、

マルチスペクトルカメラ

という特殊なカメラを搭載し、空撮画像から植被率を自動計算できるのです。(鹿島のプレスリリースはこちら

マルチスペクトルカメラを搭載したドローン

マルチスペクトルカメラを搭載したドローン

マルチスペクトルカメラとは、近赤外線を含む4~5種類の波長帯ごとに反射率を記録できるカメラです。

ドローンから空撮したマルチスペクトル画像を合成し、可視赤光と近赤外域光の反射率から、植物の光合成の活性度を表す「NDVI値」を1mメッシュごとに算出します。

その分布図データを鹿島が開発した「植被率評価モデル」に入力することで、対象範囲の植被率を算出します。

マルチスペクトルカメラの画像からNDVI値を算出し、法面全体の植被率を定量評価する流れ

マルチスペクトルカメラの画像からNDVI値を算出し、法面全体の植被率を定量評価する流れ

この手法が開発されたことで、緑化の評価作業も安全で楽になりました。

現場での作業はドローン撮影と地上基準点(GCP)の設置・測量だけになり、法面の高所や傾斜地での作業が大幅に減りました。

また生育が遅れている部分を事前に確認し、集中的な養生管理を行うことで手直し工事を未然に防ぐことによる高い品質確保も行えます。

そして、工事完了後の維持管理でも、緑化状況のモニタリングを行い、経年変化などを把握することができます。

この新技術は、茨城県北茨城市の「磯原太陽光発電北茨城メガソーラー建設工事」における法面緑化工事(約1万5000m2)に適用し、効果を確認しました。

さらに、2021年度の国土交通省が生産性を飛躍的に向上させる革新的技術の導入を目指す「PRISM事業」にも採択され、鹿島のほかジェピコ(本社:東京都新宿区)、岩手大学、東京農業大学のコンソーシアムによって、

緑化検査の遠隔臨場

も試行したのです。

目視による評価は様々な工事で行われていますが、結果だけを見る発注者はどうしても辛口な採点となり、施工時の苦労や難しさを知っている受注者は甘口な採点になる、というのが人情ではないでしょうか。

この方法なら、人間の主観が入らず、定量的にデータが算出されるので、受発注者とも納得できそうですね。

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