管理人のイエイリです。
高速道路には切り土法(のり)面が多いため、地山の長期的な動きや大雨・地震などの自然災害で、法面が崩壊しないようにすることが重要です。
鹿島は、中日本高速道路(NEXCO中日本)が発注した「東名高速道路上石山地区切土のり面補強工事」(神奈川県足柄上郡山北町)を受注し、2020年8月から2022年11月の工期で施工中です。
ここで法面の補強に使われたのが、385本ものグラウンドアンカーですが、そのうち、21本には、荷重計とともに、
ナ、ナ、ナ、ナント、
張力測定用の光ファイバー
が埋め込まれているのです。(鹿島のプレスリリースはこちら)
グラウンドアンカーとは、その名の通り、地山の内部に錨(いかり)のような定着部を設け、「ストランド」という高強度な鋼より線で地表面を引っ張ることで、法面の地盤を補強するものです。
月日の経過や自然災害などで、グラウンドアンカーが劣化し、張力が低下してしまうこともありますが、地中にあるだけに劣化状況を把握することは難しいという問題がありました。
そこでこの工事では、高速道路の切り土法面では初めて、21本のグラウンドアンカーのストランドに光ファイバーを取り付け、光ファイバー内部の散乱光を計測し、張力を測れるようにしたのです。
この「光ファイバーを用いた張力計測システム」は、2016年に鹿島、住友電工スチールワイヤー、ヒエン電工の3社がPC(プレストレストコンクリート)構造物用に共同開発したものです。(詳しくは、2016年10月31日付けの当ブログを参照)
以来、このシステムは2017年には法面工事に使えるようになったほか、2020年には沖電気工業と共同で複数のグラウンドアンカーの張力を1台の計測器でリアルタイムに遠隔監視できるシステムへと進化しました。
鹿島は将来的に、グラウンドアンカーだけでなく、橋梁やトンネル、舗装などにも光ファイバーを設置し、1つの計測システムに統合することで、
インフラ全体の状況を把握
することも目指しています。
このシステムで使われている光ファイバーは、通信用の安価なものです。
土木構造物にはPC鋼線やストランドが多く使われているので、その気になれば光ファイバーで、あちこちのひずみや応力を把握できます。また、20年程度と言われてきた光ファイバーの寿命もさらに延びる傾向にあります。
光ファイバー付きの“モノ言う部材”は、今後、社会インフラの維持管理で重要な役割を果たしそうですね。