西松建設が着工前に施工BIMを作成! 施工検討の90%をフロントローディング、将来は施工図不要に
2023年8月2日

管理人のイエイリです。

BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)のメリットの1つは、設計変更への対応がしやすいことと言われています。3DのBIMモデルを修正すれば、平面図や立面図などの図面に図面自動作成できるからです。

といっても、プロジェクトが設計段階から施工段階に入ってからは、なかなかそうはいきません。施工現場で使われる「施工図」には、細かい注記や部材などが入っており、単純に設計段階のBIMモデルを修正しただけでは図面に反映されません。

その結果、施工段階での設計変更はBIMモデルと施工図の両方を“同時更新”することになり、複数の図面への転記や修正でかえって非効率になってしまいます。

これまでの業務の流れ。施工段階で設計変更が生じた場合、複数の転記や修正が発生していた(以下の資料:西松建設)

これまでの業務の流れ。施工段階で設計変更が生じた場合、複数の転記や修正が発生していた(以下の資料:西松建設)

そこで西松建設は、手戻りや修正などの非効率を最小限にするため、「西松生産設計BIMシステム」を構築しました。

これまで施工段階で行っていた検討項目のうち、

ナ、ナ、ナ、ナント、

90%を設計段階へ

フロントローディング(業務の前倒し)することで、早期に生産設計BIMモデルを作るワークフローを実現したのです。(西松建設のプレスリリースはこちら

西松生産設計BIMシステムのワークフロー。設計段階で施工可能性などを考慮した高精度のBIMモデル作り、施工段階の手戻りや調整を減らす

西松生産設計BIMシステムのワークフロー。設計段階で施工可能性などを考慮した高精度のBIMモデル作り、施工段階の手戻りや調整を減らす

このシステムには、熟練技術者の頭の中にあるノウハウなどの「暗黙知」を、判定式やロジックによって「形式知」化し、チェックリストやBIMのアドインツールとして活用できるようにしました。

その結果、経験値に業務レベルが左右されることなく平準化され、若手の技術力向上にも役立ちます。

そして、これまで施工段階で検討していた項目のうち、90%を設計段階にフロントローディングすることで、設計と施工可能性を両立した、精度の高いBIMモデルを早期に構築できます。

現場で使う施工図は、半自動図面化ツールによって、加筆修正を最小にして作成できます。

設計段階で作成されたBIMモデルから出図した様々な施工図

設計段階で作成されたBIMモデルから出図した様々な施工図

西松建設では、このシステムを5つの物流施設工事 で使用し、実証しました。

2024年からはすべての物流施設プロジェクトにこのシステムを使用するほか、集合住宅など他の建物にも適用範囲を拡大します。2027年までに設計BIMと連動した生産設計BIMを、生産設計・工事計画・施工領域まで一気通貫で活用しながら横断的な変革を推進します。

さらに、2030年までに

施工図を不要

とする生産設計BIMの構築を目指すことで「より良い建築物を、より早く、より安く、提供し、顧客価値と企業価値を高める」ことを実現するとのことです。

早期に施工可能な生産設計BIMを構築することで、施工計画や施工管理、ロボット施工などにシームレスにBIMデータを活用するイメージ

早期に施工可能な生産設計BIMを構築することで、施工計画や施工管理、ロボット施工などにシームレスにBIMデータを活用するイメージ

これだけのフロントローディングを実現するためには、設計段階でのデザイン確定やモノ決めなど、施主の協力も欠かせませんね。物流施設の場合は、同じような設計の建物をいくつも造るので、以前の設計を踏襲することでフロントローディングがしやすいのかもしれません。

集合住宅などの場合は、VR(バーチャルリアリティー)などによって、建物竣工時の未来をイメージしてもらったり、着工後の設計変更には追加料金を設定したりする方法などで、バーチャルに完成させてから施工するというクルマの注文のようなスタイルになるのかもしれませんね。

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