管理人のイエイリです。
BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の“I”、すなわちBIMオブジェクトに内蔵されている「属性情報」を、建設業界内で有効に活用し、生産性を上げるためには、BIMオブジェクトの作り方を統一しておくことが重要です。
そこで、大林組、清水建設、鹿島建設、大成建設、竹中工務店というスーパーゼネコン5社は、オートデスクのBIMソフト「Revit」による設計施工の効率的な業務プロセスを実現するため、「BIM
Summit」というユーザー組織を立ち上げています。(2022年3月29日の当ブログ参照)
その中の「構造分科会」は2018年以来、鉄骨や鉄筋・鉄骨コンクリートの柱や梁、壁や床から、木造系の構造部材まで、Revit用のBIMオブジェクトである「ファミリ」をリリースしてきました。
そして同分科会は、新たなファミリのデータ仕様統一に乗り出しました。
ナ、ナ、ナ、ナント、
建物の免震装置
ファミリの設計データを、異なる企業間で共通に利用できるようにしたのです。(オートデスクのプレスリリースはこちら)
免震装置とは、建物の躯体が基礎とつながる部分に設置し、地震発生時には変形して、地震の揺れが直接、建物に伝わらないようにするものです。
これまで、免震装置を使った建物の設計を行うためには、構造設計者はメーカーからカタログやCADデータを取り寄せて、自前でファミリを作成していました。
メーカー提供のファミリがあっても、設計に使う型番や配置方法などが、設計フローに合っておらず、使いにくい面がありました。
そこで、免震装置のメーカーであるブリヂストンとオイレス工業は、免震装置のせん断弾性係数やゴム径などの詳細データの作り方を、BIM Summit構造分科会の監修で共通化しました。
さらに、設計者とメーカーの双方が免震装置ファミリの利用や整備がしやすくするため、ファミリを
親ファミリと子ファミリ
による「入れ子(ネスト)」構造にしたのです。
親ファミリは、建設会社などの構造設計者が設計符号や型番、配置レベルなど、構造設計に使う属性情報を自由に入力できるようにしたものです。
一方、子ファミリは免震装置メーカーが作成したデータをそのまま入れます。
こうして親子を分けておくことで、建設会社と免震装置メーカーは互いに相手に合わせることなく自由に属性データを更新でき、かつ共通で使う部分の仕様はしっかりと保つことができるわけです。
これらの免震装置の親ファミリは、「Autodesk Revit 構造設計用ライブラリ」のウェブサイトから無料でダウンロードできます。
また、ネストされた子ファミリは、免震装置メーカーのホームページで公開される予定です。
今後、大きな変形に対応した「弾性すべり支承」などの免震装置のファミリも整備されていくとのことです。
これまでの柱や梁、壁などの「静的ファミリ」に、免震装置のような「動的ファミリ」が加わったことで、BIMによる設計がさらに広がっていきそうですね。