管理人のイエイリです。
劇場やコンサートホールなどの混雑や音響効果は、建物の基本形状に大きく左右されるので、設計の初期段階でしっかり検討しておくのが理想的です。
しかし、これまでの設計ワークフローでは、建物の設計案が固まってから、人流や音響などの専門家に解析を依頼していたため、設計の手直しにも限度がありました。
このジレンマを解決しようと、清水建設は設計の初期段階で、施設の人流や音響の問題を、
ナ、ナ、ナ、ナント、
設計者自身が解決
できる2つの3Dエンジニアリングツール「Shimz DDE Pedex」と「Shimz DDE Audix」を開発したのです。(清水建設のプレスリリースはこちら)
「Shimz DDE Pedex」は、人流や混雑などをシミュレーションするもので、ベクトル総研(本社:東京都渋谷区)とアルゴリズムデザインラボ(本社:東京都渋谷区)の協力を得て開発しました。
これまでの群集行動の解析は、非常時の避難行動を評価するものが多かったですが、このツールは平常時のトイレ待ちや開場待ちの混雑など、様々な行動を評価できるのが特徴です。
移動目的や移動経路、歩行速度、扉の位置・数・サイズ、廊下の幅・長さなどのパラメーターを変えることで、数人のグループで入退場する来場者の待ち合わせ行動や館内回遊行動、トイレの待ち行列などがどう変化するのかをビジュアルに確認できます。数万人もの群集行動も再現できます。
一方、「Shimz DDE Audix」は、コンサートホールなどの空間内の音響性能をビジュアルに評価システムです。
歌声などがステージ上から個々の聴衆に明瞭に届くかを「初期反射音分布」で確認する機能は、その良し悪しを数値化したので、専門家以外の設計者でも評価できます。
このほか残響時間や音声明瞭度、音圧分布などの指標を設定し、指標を満足する床・壁・天井の形状と材質を変えて吸音性能の検討を繰り返すことで、デザインを最適化できます。
人流や音響を最適化した設計を行うためには、条件を変えてシミュレーションを繰り返す必要があります。
その点も、これらのツールはよく考えられており、様々なパラメーターを変えながら
数千パターンを総当たり
して、最適な案を選択することができるのです。
これらのツールは、人流や音響の問題を、建物の形が決まる前に「フロントローディング」(業務の前倒し)で解決できる点に大きな特長があります。
建物のビジュアルなデザインだけでなく、「目に見えない性能」も見える化して勝負する時代になってきましたね。