「TawaRemo」によるタワークレーン遠隔操作で20%の生産性向上! 鹿島が成瀬ダムの現場で実証
2024年11月8日

管理人のイエイリです。

鹿島は、秋田県で施工中の成瀬ダム現場で、堤体のコンクリート打設にタワークレーンを使っています。

ダムの建設現場は施工エリアが広く、タワークレーンの運転席も地上から約118mと高いため、クレーンのオペレーターは運転席にたどり着くまでに多くの時間を要していました。

成瀬ダムの堤体打設を行うタワークレーン(以下の写真、資料:鹿島)

成瀬ダムの堤体打設を行うタワークレーン(以下の写真、資料:鹿島)

広大な現場に建つタワークレーン。運転席は地上約118mなので、オペレーターが上るのも大変だ

広大な現場に建つタワークレーン。運転席は地上約118mなので、オペレーターが上るのも大変だ

そこで鹿島は、主に建築現場で使われてきたタワークレーンの遠隔操作システム「TawaRemo(タワリモ)」を、ダム工事現場として初めて導入しました。

その結果、オペレーターの移動時間は、

ナ、ナ、ナ、ナント、

1日65分も短縮

され、クレーンの稼働時間は約16%も増えたのです。(鹿島のプレスリリースはこちら

堤体の脇に設置されたTawaRemoのコックピットから、約500m離れたタワークレーンを遠隔操作するオペレーター

堤体の脇に設置されたTawaRemoのコックピットから、約500m離れたタワークレーンを遠隔操作するオペレーター

遠隔操作用のコックピットは、クレーンから約500m離れた堤体脇の地上に設置され、クレーンの運転席と同様に操作レバーやフットスイッチが配置され、複数のカメラからの映像や荷重などの動作データ、異常信号を表示する各種モニターがあります。

また、タワークレーンに設置されたジャイロセンサーで検知した風や吊り荷で生じる細かな振動も、遠隔操作のコックピットに伝わってくるので、オペレーターは運転席にいるのと同じような感覚でクレーンを操作できます。

しかし、ダム現場で使用するタワークレーンは大型で、吊り荷のワイヤが長いため、旋回などを行った後の「荷振れ」をとめる制御には技量が求められます。この難易度の高いクレーン操作を繰り返し、長時間連続で運搬するので、オペレーターには負荷がかかっていました。

そこで、このクレーンには「自動運転システム」も搭載されており、最適な運搬ルートを記憶すると自動的に繰り返す「ティーチングプレーバック方式」が使われています。

このシステムのおかげで、コンクリート打設1回当たりの作業時間は、従来に比べて約30秒短縮し、コンクリート打設速度は約5%向上しました。

オペレーターは、習熟度や身体的疲労度、天候などに左右されることなく、長時間連続で繰り返し作業が行えます。

自動運転システムも搭載されているので、長時間の繰り返し運転も楽に行える

自動運転システムも搭載されているので、長時間の繰り返し運転も楽に行える

このほかGNSS(衛星測位システム)の位置情報によって、工事用車両や作業員などの安全管理や運行管理をリアルタイムに行える「スマートG-Safe」システムも導入しており、

吊り荷下の直径6m

に設けた立ち入り禁止エリアと、作業員の位置関係をオペレーターはコックピットのモニターで、作業員はスマートフォンで、それぞれがリアルタイムに確認できるようにしました。

オペレーターと作業員の双方が、吊り荷下の立ち入り禁止エリアをリアルタイムに確認できる「スマートG-Safe」の画面

オペレーターと作業員の双方が、吊り荷下の立ち入り禁止エリアをリアルタイムに確認できる「スマートG-Safe」の画面

遠隔操作、自動運転、スマートG-Safeを組み合わせた結果、打設時のタイムロスが削減でき、サイクルタイムのムラがなくなったため、生産性は約20%向上し、安全性も高まりました。

鹿島は今後、橋梁工事などダム以外の工事にもこのシステムを活用できるように技術開発を進めるほか、1人のオペレーターが遠隔地から複数台のクレーンを運転できるシステムの実現を目指していくとのことです。

建設機械の遠隔操作は、運転席への「移動のムダ」を削減するだけでなく、様々な生産性向上や安全性の向上、そして働き方改革の効果が期待できそうですね。

(Visited 1 times, 2 visits today)

Translate »