管理人のイエイリです。
BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の利点は、建物の3Dモデルと各部の仕様を表す「属性情報」が1つにまとめられているので、建物情報の管理が便利と一般には評価されています。
一方、概念設計や基本設計など初期段階では、3Dモデル作成に属性情報の入力が付きまとうと、設計者の頭に浮かんだデザインやプランをまとめていくスピードが妨げられるというデメリットもありました。
「BIMを導入したものの、いまいち仕事の効率が上がらない」という方の中にも、こうしたジレンマにお悩みの方がいらっしゃるでしょう。
そこで、BIMソフト「Revit」の長年のユーザーである伊藤誠之氏と山本歓氏は、BIMの利点を生かしながら、驚異の“爆速”で建築設計を進めるワークフローやノウハウをまとめた実務書、『アジャイルBIM Revitで変わる建築設計の常識』(技術評論社刊。税込み4620円)を2025年5月に発刊しました。
“爆速設計”を実現する秘訣とは、最初のうちは
ナ、ナ、ナ、ナント、
あいまいなパーツ
を使って「じゃかじゃか」とプランを作っていき、詳しい属性情報は後でまとめてBIMモデルに注入するワークフローにあるというのです。
あいまいなパーツとは、部材を区別して扱える記号程度の属性情報しか持たない簡単なファミリを意味します。
建物の外観やプランなどを考えていく間は、あまり属性情報のことを考えずにあれこれ試行錯誤を繰り返して、設計を固めていきます。
そして詳しい属性情報は、ある程度プランが固まってきた段階で、Revitから「集計表」を書き出してExcelで一気にデータを入力し、再度、集計表からBIMモデルに反映させます。
また、排煙区分などの自動入力は、壁の位置などを考慮する必要があるため、Excelで入力するのは難しいです。
そこで登場するのが、Revitの3Dモデリングなどを数式やアルゴリズムで自動化する
Dynamo
というツールなのです。
プランの検討は設計者の思考を妨げないスピードでじゃかじゃか行い、属性情報の入力は後で自動的に行うというワークフローによって、Revitによる爆速設計が実現できるというわけです。
このほか、国土交通省が無料公開している3D都市モデル「PLATEAU」のデータを使って、建物周辺の街並みモデルを作成する方法なども紹介されています。
これまでのBIM入門書は、モデリングなどの操作方法を解説するものがほとんどでしたが、「アジャイルBIM」はすでにBIMを使っている設計者が、生産性向上を実現するためのワークフローをテーマにしている点で、初めての本と言っても過言ではありません。
総ページ数は496ページにも及び、読者がRevitを使って実際に体験できるように、サンプルデータもダウンロードできます。
Revitでの爆速設計を身につけたい方は、ぜひ、この本でトレーニングしてみてくださいね。