管理人のイエイリです。
人手不足が年々厳しくなる日本の建設業界では、施工の省人化や生産性向上を実現するための技術開発が活発になっています。
特に山岳トンネルの分野は、施工の遠隔化や自動化、無人化が進み、その最先端を走っているといっても過言ではありません。実際、大手建設会社の技術開発レベルは、施工の無人化まであと一歩というところまで進んでいます。
そんな中、安藤ハザマとNTTは、次世代の山岳トンネル施工技術の開発に乗り出しました。
これまで危険な坑内に作業員や施工管理者が立ち入って行っていた施工管理や維持管理を、
ナ、ナ、ナ、ナント、
光通信とデジタルツイン
技術を組み合わせた「IOWN(アイオン)構想」という枠組みによって、遠隔化しようというものです。(安藤ハザマのプレスリリースはこちら)
その内容は、「Use Case and Technology Evaluation Criteria – Construction Site」という文書(英文)にまとめられ、一般公開されています。
これまで遠隔施工管理などの技術開発では、建設会社などが長距離回線や現場内ネットワークなどの通信技術を個別に調べて組み合わせたり、必要に応じて技術開発を行ったりしてきました。
一方、今回の開発では、ユーザーの立場から遠隔施工の実現に必要なことを、ワンストップで解決するための4つの「ユースケース」としてまとめたのが特徴です。
例えば、IOWN APN(All-Photonics Network)という大容量・低遅延通信ネットワークによって現場の高解像度映像やセンサーデータを集約して現場の遠隔監視や遠隔臨場、大容量点群データの遠隔解析による出来形管理を実施するほか、完成後には光ファイバーを活用した経年劣化のモニタリングを行う構想です。
これらのユースケースが実現することで、発注者からゼネコン、サブコン、機器・サービスの提供者までが遠隔化による省人化や安全性の向上などのメリットを得られます。
個々のユースケースは2026年3月までに「PoC」(概念実証)を開始し、仕様検討・パソコンシミュレーション・実験を経て現場でのIOWN活用を検証、次世代ICT基盤の構築を目指します。
この技術開発計画が画期的なのは、「IOWN Global Forum」(以下、IGF)という
国際的な組織
から、建設業界として初めて正式承認を受けたことにあります。
IGFの本部は米国・マサチューセッツ州に置かれ、ウェブサイトもほぼすべて英文で、マイクロソフトやオラクル、NVIDIAといったそうそうたるIT企業が参加しているので欧米の団体と思われがちです。
しかし、IGFを立ち上げたのは、光通信技術に強いNTTやソニー、NECといった日本企業であり、最初から「国際的な議論の場」とすることを狙ってIGFを設計したのです。
本部をあえて米国に置いたのも、その戦略の一環です。
人手不足という究極のお困りごと解決のために、世界をリードする形で進む日本の遠隔施工技術は、IGFという場を通じて「世界標準」に発展する可能性が出てきました。


















