管理人のイエイリです。
建物の3次元モデルを使って、建物内外の風や対流現象をコンピューターで解析する熱流体解析(CFD)が、建物の環境性能を高めるために使われています。
しかし、空調の吹き出し口やエアコンなどから、どんな方向にどんな風速の風が吹き出してくるのかを設定するのは、非常に面倒でした。時にはカタログなどから自分でデータを作る必要もありました。
こうした手間をなくすため、空気調和・衛生工学会の換気設備委員会BIM・CFDパーツ化小委員会では、2010年から3年間の計画で吹き出し口などのパーツを作り、どのソフトでも建物モデル内に置くだけで簡単にCFD解析ができるようにするための開発を続けています。
その成果が、11月22日に東京・飯田橋で開催されたシンポジウム、「換気設計のためのCFD活用とBIMとの連携」(主催:空気調和・衛生工学会)で発表されました。
「換気設計のためのCFD活用とBIMとの連携」のシンポジウム会場(左)と全体司会を務めた東京大学教授の柳原隆司さん(写真:家入龍太。以下、同じ) |
CFDパーツ化の開発状況は、後半の第二部「BIMと熱負荷計算・CFDの連携」で明らかにされました。
同小委員会BIMシミュレーションワーキンググループ主査の石崎陽児さん(大林組)、小委員会幹事の今野雅さん(東京大学)、CFDパーツ化ワーキンググループ幹事の一ノ瀬雅之さん(首都大学東京)から報告があった後、壇上に立ったのは、
ナ、ナ、ナ、ナント、
オートデスクとグラフィソフト
のBIMソフト担当者だったのです。
つまり、BIM界でしのぎを削るライバル企業同士が同じ演台に立ち、共同で発表を行ったわけです。「どのソフトでも使えるCFDパーツを作る」という姿勢が表れていました。
2人はオートデスクの大浦誠さん、グラフィソフトの平野雅之さんで、それぞれ意匠設計用BIMソフト「Revit Architecture」、「ArchiCAD」によって、熱貫流率など空調設計用のデータをインプットした建物モデルを作り、CFD解析用のデータとして書き出す方法について説明しました。
演台に立ったグラフィソフトの平野雅之さん(左)とオートデスクの大浦誠さん(右) |
ArchiCAD(左)とRevit Architecture(右)で作成したCFD解析用のBIMモデル |
その次は、いよいよCFDパーツを使った解析のデモンストレーションです。ここでもBIM対応の
CFDソフトベンダー3社
の幹部と、オープンソースのCFDソフト「OpenFOAM」のユーザーが順番に演台に立ちました。
アドバンスドナレッジ研究所は「FlowDesigner」、ソフトウェア・クレイドルは「STREAM」、環境シミュレーションは「WindPerfect」、そして鹿島建設の狭間貴雅さんは「OpenFOAM」によって、それぞれCFDパーツを室内に配置して気流などを解析した結果を説明しました。
CFDパーツのデータは「XML」形式で作られています。空調機の機種単体や小規模空間を解析する「ミクロパーツ」と、大規模空間の大局的な温度ムラなどを検討する「マクロパーツ」があります。
このシンポジウムで発表されたBIMモデルやCFDパーツは、www.caedata.orgからダウンロードできるようになってますので、ご興味のある方はぜひ、試してみてください。
空気調和・衛生工学会では、今後、空調機器メーカーとの連携や協力を得て、マクロパーツ作成に必要なデータ諸元を整備していく予定です。
世界的に見ても、各ソフトで共通で使えるCFD解析用のパーツ開発は先進的です。ぜひ、この分野では省エネ大国ニッポンが世界をリードしていってほしいですね。